涼子あるいは……
パソコンは、蚊の飛ぶような音を立てて、CDを開き始めた。
二月二十一日
昨日はとっても素敵だったわ、太郎君。先生の脚をあんなに高くあげて、もう、あそこが裂けちゃいそうだったわ。大人顔負けねえ。先生は、はっきりと負けました。で、今日からは、生理なので、次は二十六日。お当番は、彰介君と友彦君。彰介君はいつものように友彦君を迎えにいってね。
延々と続く痴戯痴態の記録。
金吾は大急ぎで最後の日付のところまでスクロールで下る。心臓が口から飛び出しそうだった。
八月三日
本当にごめんね、太郎君。だけど、どうしてもどうしても、太郎君の子供がほしいのよ。太郎君は、何にもしなくていいのよ。忘れたっていいの。いや、一日もはやく忘れて。先生は一生結婚なんかできない人間なの。だけれども、太郎君の子供は立派に育てるわよ。太郎君のような素敵な少年にね。先生はとっても悪い人間だけれども、太郎君、どうか許して。お願いだから許して。先生はこんな風にしか生きてこられなかったの。あなたたちを巻き込んで、あなたたちをおもちゃにして、あなたたちの精神をゆがめてしまって。私は悪魔です。悪魔だからこそ、ずうずうしく許してなどといえるのです。太郎君、私を許して。さもなければおなかの子と一緒に殺して。
「読むな。画面をこちらに向けろ」
金吾は震える手でパソコンを掴み、モニターを友彦に向けた。
「これだ」
友彦はテーブルにしがみつくように腕をいっぱいに伸ばして画面をはじめからスクロールし始めた。
「これから事実をお知らせしよう。交換条件を遵守する私の誠実をアピールしたいからだけではなく、事実に対する君の反応に私が強い興味と期待を持っているからだ」
「山岸涼子は性欲異常亢進者、ニンフォマニアだった」
友彦は両手を後ろに組んで語り始めた。
「そんなはずはない。先生はよく知っているぞ……」
出だしの怒声は、ため息交じりの震え声で終わった。自分が嘘をついているのを明瞭に意識した。
「われわれのほうがよく知っているぞ。CDをもっと見たいのか」
友彦はあごを上げて左右に振りながら憤然と言い放った。
「彼女の罠にかかった犠牲者は、われわれだけではない。五、六年生を含めて十人近い。ただ、上級生たちはつまみ食いの対象だった。主要な餌食は、私と太郎だった。



