帰郷
そして篤信は帰郷した経緯を今一度思い返した。吹っ切れたいからだ。それなのに、いざ大切な人を前にすると本当の自分を隠してしまう。篤信は、今までの自分の身勝手さに腹立たしさと恥ずかしさを、今まで待ち続けている朱音に対して申し訳ない気持ちになった。
そして最後にもう一度自問自答した。これから自分はどうすればいい?今の自分にできることって何だろうか?篤信は帰郷してからの自分が聞かされた言葉を反芻した。朱音が精一杯の勇気を出して「力になってあげたい」と言ったこと、陽人が「頑張らない」と言う事の意味が今初めて分かった。
神戸に帰郷しておよそ半月、篤信はようやく見失いかけていた自分の今すべき事が見えてきた。
篤信は東京に戻ることを決めた――。
帰郷 第三章に続く