魔王城まで何マイル?
「うん、そんな気はしてた」
「お兄さんいくつに見えると思う!?じゃじゃん!なんと25歳!」
年齢云々は置いておいて、アレンが初心者となると、冒険の経験者は仏頂面のバージルのみということになる。
ひとりで騒いでいるアレンを無視してルイスはバージルに向かって手を差し出した。
「ねえ聴いてる!?ルイス君!」
「バージル?経験者のアンタにしてみれば、俺は初心者だからなにかと迷惑かけるかもしれないけどよろしく」
「経験者は私だけではない。瑛!」
「はーい」
「瑛も経験者だ」
「えええ!?こっちも!?」
「はい、ルイス。私とバージルは前も同じパーティで魔王討伐の旅に出たことがあります。因みに私今僧侶ですけど転職して間もないので呪文は初歩的な体力回復しかできません」
「私も今は魔道士だが転職したばかりだ。以前のパーティでは騎士をしていた。呪文より剣が好きだ」
なんだかいろいろ大事なことをいっぺんにカミングアウトされた気がする。
因みにギルドで転職をすると、今までの職業で培ってきた技や、体力、装備できるものが変わってくるのだ。
呪文を使える職業から使えない職業に転職してしまえば呪文は一切使えなくなる。バージルと瑛の場合その逆であるので冒険中困ることはないだろうが、それはつまり全くの初心者パーティということになる。
「ぜ、前途多難すぎんだろ・・・」
ルイスのつぶやきは酒場の喧騒にかき消された。
作品名:魔王城まで何マイル? 作家名:中川環