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愛を抱いて 7

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ボーイが、持って来たワインのラベルをみゆきに見せ、何か喋ってから、それをグラスに注いだ。
まだ首が痛かった。
「随分痛そうね?」
彼女は云った。
「君は痛くならなかったの?」
私は不思議に思って訊いた。
「少し痛かったわ。」
彼女は、痛いのを我慢してなお視てる方が不思議だと、云いた気だった。
しかし私は、首を温めるためにホテルへ行く提案を、忘れなかった。

 彼女の肌は透き通る様に白かった。
「あれ? 
君は処女かい?」
行為の途中で私は云った。
彼女は眼を開けて、小さく頷いた。
「御免なさい…。」
「いや、謝る事はないさ。」
その年、私は仲間内からバージン・キラーと異名を取る程、よく処女に巡り逢った。
私は、処女と非処女を分けて考える事はあまりしなかったが、ただ処女の香りを知っていた。
女の子の認識の違いによって個人差はあったが、処女の恥垢の匂いは印象深かった。
汗、体液、恥垢、トリコモナスといった匂いが混じり合い、一種異様な香りがした。
小陰唇の裏側に、豆腐の粕の様な物がへばり付いている事もあった。
処女は、今まで腰に強い衝撃を受けた事がないため、そのショックは大きく、女によっては発熱したり、時には吐いたりする者もいた。
みゆきは、額から、身体全体からジワッと汗を出した。
我々の格言に、「処女に頭の痛い思いをさせてはならない。」というのがあった。
彼女達は無意識に、ベッドの上へ上へと逃げて行った。
頭がベッドの端に当たって、もうそれ以上上へは行けないのに、板に頭を押付けなおも逃げようとした。
私はみゆきの身体を、何度もベッドの中央に引き戻しながら、行為を続けた。

 セックスの後、みゆきはまだ少し気が動転しているのか、シャワーへ行く余裕がなかった。
私はティッシュで彼女の粘膜を拭いてやった。
部屋の冷房を弱くするため、私はベッドを離れた。
「処女は嫌い…?」
私がベッドに戻って煙草に火を点けた時、彼女は云った。
「どちらでもないさ。」
「そう…? 
何か面倒くさくて、きっと嫌いだと思ってた…。
でも嬉しい。
これからは…。」
「女は10回目までは処女だと、俺は思ってるよ。」
「…。」
「処女とそうでない女と分けるのは、おかしいと思うな。
少なくとも、1回だけした娘と処女とは、どこも違わないさ。」
「そうなの。
残念ね…。」
「次からは痛くないとでも、思ったのかい?」
私はニヤニヤしながら云った。
「そうは思ってなかったけど…。
じゃあ、早く10回やって頂戴な。」
私は煙草をシーツの上に落とした。

 翌日、三栄荘に香織とフー子がやって来た。
2日前、二日酔いの和代を送って行った時、柳沢は急遽あさって帰省すると云い、帰省を1日見合わせたフー子と一緒に帰る事になった。
私と香織は、二人を上野まで見送りに行った。
夏の太陽が眩しく照り衝けていた。
「しかし、お前も随分急だな。」
高崎線のホームで、缶コーヒーとお菓子を買い込んでいる柳沢に、私は云った。
「柳沢君も、早く彼女に逢いたいんでしょう?」
香織が云った。
「実は、その通りだ。」
お菓子をフー子に手渡しながら、柳沢は云った。
「これだわ…。
いいわねえ。
二人して愛する人の待つ処へ、帰って行けるなんて…。」
「あら、香織だって、東京でそちらの彼と夏休みを過ごすんでしょ? 
私達が帰ったからって、あまり喜び過ぎてると失敗するわよ。」
「御忠告ありがとう。
早く帰りなさいよ。」
「でも恋人に逢う前に、電車の中で新しいロマンスが生まれるんじゃねえか?」
私は云った。
「それは、素敵だわね。」
フー子が云った。
柳沢は笑っていた。
発車のベルが鳴り、二人は電車に乗り込んだ。
車内は割合空いていた。
座席を決めてから、柳沢が窓を押し上げた。
「じゃあ。」
「またね。」
「元気で。」
「バイバイ。」
電車はゆっくり、そして次第に速くホームを滑って行き、やがて小さくなった。
私と香織は、階段の方へ歩き出した。


                           〈一四、横浜花火大会〉


作品名:愛を抱いて 7 作家名:ゆうとの