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はじまりはいつも 第1話 笑顔の行方

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 いつも二人で食事をしている大広間。 大きなテーブルに僕と雅じぃの二人。 その上にはオムライスやビーフシチューなどの洋食料理が並ぶ。 僕は雅じぃが作ってくれる料理が大好きだった。 

 雅じぃにはそこまで自分を演じているつもりはない。 けど雅じぃには全部ばれているように思えた。 だからその後、何も僕の方から言えなくなってしまった。 そんな僕に気遣ってか、白くなった髭を手で触りながら、目を少し細めて会話を続けてくれる。

 「坊ちゃん、すいませんが食事の後、坊ちゃんが小学校の頃、描いてくださったわしの似顔絵を見せてくれませんかの。 あの絵は、何度見ても心に響く」

 「あーっ、よく覚えてるね。 わかった、持ってくるよ」

 
 僕は自分の部屋に戻り雅じぃの似顔絵を探した。確かどこかにまとめて置いてあったはずなんだけど。 どうも記憶が曖昧で困る。 あれこれ探しているうちに、僕は絵画を飾っている壁の裏に、小さな隠しスペースを作っていた事を思い出した。 そこには大きな箱があって、確かその中に......

 「これだ!!」

 まるで宝箱でも見つけたかのような歓声を、僕はあげていた。 そしてキラキラ光る折り紙やら、カードやらを貼付けて、デコレーションされた正方形の箱を取り出し、中を開ける。 何とそこにはその当時の自分にとって大切だったものがキチンと保存されていた。 もちろん雅じぃの似顔絵も、その中で見つけた。 画用紙に鉛筆で大きく描かれ、色なんかもついていて、隅の方に平仮名で(まさじぃ)と書かれている。

 しかし、似ているのだろうか? 僕にはよくわからない。 けど本人が心に響くと言っているのだから、多分そうなのだろう。
 僕は似顔絵を持ってその場を立ち去ろうとした、その時だった。 箱の奥から、何やら見覚えのあるものを見つける。 


 
 
 ......




 しばらく時間が止まった気がした。 
 全身に鳥肌が走り、動けなくなってしまった。

 
 

 当時の自分が一番大切だったもの。 当時の自分を救ってくれたもの。 あんなに心を打たれたのに、あんなに感謝をしたのに、今ではほこりをかぶって、置き去りにしてしまっている。 本当の自分を取り戻したはずなのに、僕はいつの間にかまた同じ事を繰り返していた。

 僕はゆっくりとそれを手に取る。 あの頃ふさぎ込んでた僕を、元の世界に連れ戻してくれた一冊の絵本。



(ひとりぼっちのきょうりゅう 作 りく)


 
 自分でもわからない、今自分が感じているものはなんなのか、胸からこみ上げてくるこの気持ちはなんなのか、そしてこんなにも目頭が熱くて仕方がないのはなんなのか......


 「もう遅いよ............今更そっちになんて戻れる訳ないよ!!」


 心のはけ口がわからなかった。 僕の名前は佐々木翔太。今日の僕はやはりどこか調子がおかしい。


 つづく