Lady go !― 幸せがクルマで♪ ―
___70000km 〜 素敵な娘
「こんにちは 乗ってもいい?」
しばらくすると、また違う娘さんが乗ってきたの (モォ〜)
その娘さんは優しく微笑んでいたわね。悔しいけど今度はちょっとは素敵な娘さんのようだったわ。
その素敵な娘さんと会う日の彼は、以前にも増して夢見心地なように見えた。ワタシも いつもより遠くまで走ることができて楽しかったし満足だった。ワタシの車内はきまって素敵な娘さんの香りが漂っていた。
ワタシはガソリンを飲むだけだけど、彼は赤いウインナー、しかもタコさんになっているウインナーや 黄色い卵焼き、海苔いっぱいのおにぎりを食べていた。
「うまいよ」なんて、見たこともないような だらしなーい顔も 素敵な娘さんの前ではしていたわね。もうワタシのほうが恥ずかしくって…。
素敵な娘さんは 優しくワタシのドアを開けたり閉めたりしてくれたので、ワタシはそれに負けないくらいにふんわりシートで包んであげたの。
季節がふたつ過ぎた頃、素敵な娘さんが彼と暮らすようになった。
そういえば素敵な娘さんも、何度かワタシを運転したことがあったわ…。まったく気取らないけど 気ままな素敵な娘さんらしい運転ね。なんだかクスぐられているようでワタシはやんちゃになってしまう。一度なんて右のウィンカーを示させておいて いきなり左折っ、、(キァァ!) その時は ワタシのせいじゃないよぉって周りのクルマ達に大声で叫んだんだからッ。
週末には 毎週のようにショッピングに出かけたり、大きな公園まで散歩に行ったり、時には泊りがけの旅行に行ったりと 素敵な娘さんとのお出かけがとても楽しみになっていた。
このままずっと幸せでいたい…。
彼はワタシの健康管理もきちんとしてくれる。古くなった部品も交換してくれるから ドライブだっていつも快適よ。
でもあの日、ドライブの途中にワタシは故障をしてしまったの(ドウシヨウ…)
あの日は朝からオイルのまわりが悪くって、すこし体調を崩してしまって、我慢しながら走っていたんだけれども、帰り道にワタシは道の真ん中で止まってしまったの。とにかくワタシを道の端まで寄せると、彼はひどくしょんぼりしていたわ。
「行きましょ 」
それなのに 素敵な娘さんがそう元気よく言うとさ、急に元気になっちゃったりして、二人でワタシを押しはじめてくれたの。何度もお互いに頑張れって励ましあいながら、とうとうガソリンスタンドまで辿り着いた時には本当に嬉しかった。素敵な娘さんの細くて白い手も汚しちゃった。彼も素敵な娘さんも額が汗でいっぱいになっていて、ワタシは冷や冷やだったかな、、。
そうしてワタシも素敵な娘さんが大好きになってしまっていたの。
作品名:Lady go !― 幸せがクルマで♪ ― 作家名:甜茶