冥界解明迷宮 ~朝顔の棘~
戸草は、店員の申し出を固辞してトイレに入った。出てきたとき、戸草の装束はひじょうに奇妙なことになっていた。ジャケトもシャツもズボンも後ろ前に身につけ、どうやっているのか革靴までもが前後さかさまだった。さらに奇妙だったのは、この不自然な姿の戸草を、店内の誰もが、見咎めなったことだった。そのなりで、戸草は一人で、地下迷宮へと入っていった。係員からコース図もヒントも受け取らず、食料もチップもないまま、ふらふらと冥界へと下っていった。
「次のヨイガシに。きっと」そう呟きながら。
おわり
作品名:冥界解明迷宮 ~朝顔の棘~ 作家名:みやこたまち