Monster Factory 『すべてのはじまり』
モンスターたちケイトに会う。
編集途中工場で働くモンスターたちがそろってきた頃、ついに人間の世界ではじめての会議をすることになりました。工場内の掃除も終わり会議室という名前を付けた部屋にモンスターたちは集まりました。
「そろそろケイトが来るけど怖くはないからな。」
実はこの会議が嬉しい反面、ジョニーは不安でした。モンスターたちが人間を怖がるんじゃないか?ケイトも怖がらないとは限らない。そう思っていたのです。
みんなも実はそうでした。まだジョニー以外誰とも会ったことがなく、すごく不安でどきどきしていました。口数も少なく、どうしていいかわからず工場の中をうろうろ行ったり来たりしていました。
「大丈夫かな?」
プレッチェロはジョニーにくっついています。
「たっくさん人間がやってきて捕まえられたりしないかな。」
プレッチェロの言葉を聞いてリップルとロッティはすごい顔をしています。
「ケイトはそんなやつじゃないよ!」
ジョニーは何度もそういいますが、みんなの人間の悪い噂は止まりません。
みんなの不安がピークに達した時、会議室のドアが開きました。
まず入ってきたのはドアの外で待っていたシャーロットでした。
笑ながら何か話して、箱を2つ受け取って入ってきました。そしてその後ろには小さな箱を4つ持った大きな人間がいたのです。
(ジョニーが約100センチ、ケイトは165センチというところです。)
みんな固まってしまい、プレッチェロはジョニーの後ろに隠れました。
「シャーロットありがとう!ちょっとみんな手伝ってよ!」
ケイトは笑いながらゆらゆらしている箱が落ちないようにテーブルに置きました。
ジョニーはいつも通りのケイトを見てほっとしました。ケイトはモンスターも人間も変わらないといつも言うのです。
「ドーナツだ!!!」
ジョニーは積んである箱を一つずつ並べ、急いで開けて騒ぎました!ドーナツは大好きです!
そしてシャーロットの箱はピザ。蓋をあけて
「おいしそうね〜!」と言いました。
ケイトはテーブルに取りやすいように並べ、
「ここまで来るのは結構時間がかかって、いつもお腹が減っちゃうんだよね。」
と恥ずかしそうに言いました。ジョニーはドーナツを食べながらうんうんとうなずきました。
部屋はおいしそうなにおい(または嗅いだことのない不思議なにおい)に包まれました。
ケイトはよろしくね。と握手をしてまわり、食べてみて!とみんなに勧めました。
触角をゆらゆらさせながら
「もっと怖いのかと思ったよ」
とセスが言うと
「みんなより背が少し高いくらいだよ。」
と笑いながらドーナツを渡しました。
ケイトは白い肌でシャーロットと同じ目の色をして、髪は短く、薄い茶色でなぜかジョニーに似た雰囲気を持っていました。
ケイトはみんなに挨拶を済ませて、ジョニーから聞いて想像していた姿と比べていました。
そしてプレッチェロを探しました。プレッチェロはやっぱり怖くてテーブルのそばで隠れていたのです。
ケイトは自分から行ったら怖がってしまうかなと思い手招きしてみました。プレッチェロはみんなに行っておいで、と言われながら
ゆっくりケイトのそばに行きました。
「はじめまして。ケイトだよ。ジョニーはプレッチェロの話しばっかりするの。会えて嬉しい。」
プレッチェロはケイトの目を見て
「僕はケイトの話しばかり聞かされてたよ。」
といいました。
「お互いそうだったんだね。私はずっと不安だったの。もしかしたら会わせてもらえないんじゃないかと思って。」
プレッチェロは不思議そうな顔をしました。
「ほら、私は人間で、みんなはモンスター。だからダメなのかなって思ったの。よろしくね、プレッチェロ。」
そういうとケイトはプレッチェロのふわふわした毛を撫でてニコッとしました。
みんな一安心。ケイトは全然こわくない。
「もっと早く紹介してくれればいいのに。」
ケイトはジョニーに小さな声でいいました。
ジョニーは出会った人間がケイトで本当によかったと思いました。
ケイトが仲間と話している姿を見て、初めてケイトと会った時のことを思い出しました。
あの時だって、ケイトは驚きもしなかった。本当は怖かったんだろうか?
この会議では花をそだてるという事以外何も決まらず、みんなで食べて話しておしまいになりました。
ピザとドーナツは好きなのがジョニーだけだったらどうしようかと思いましたが、みんな大喜びでした。
ケイトは胸をなでおろしました。
みんなが帰った後(モンスターたちは自分たちの世界へ)ジョニーとケイトは眠ったプレッチェロを見ながら
話しをしていました。
「不思議な出会いだ。小さいケイトがまさかこんなにデカくなるなんてな。」
とジョニーは笑いました。
「そうだ、私、一つジョニーに渡したいものがあるの。」
ケイトはバックから白い箱を出しました。
その蓋を開けるとネックレスが出てきました、
銀色の模様のついた枠に丸い青緑の石がはまっています。
「覚えてる?昔、ジョニーが私に青い石をくれたじゃない?」
ジョニーはアッとという顔をして
「もしかしてあの石か!?」
と箱の中の石をよく見ました。
「そう。その石をね、半分にして二つに加工してもらったのよ。」
ケイトは服の中から自分のネックレスを出し、ジョニーに見せて箱の中の物をジョニーの首にかけました。
「友情の証に。一つずつ。私はこの石のおかげでいろんなこと頑張れたの。」
ジョニーは首にかかった石を見て感動しました。
「ケイト、ありがとう。これは父さんが付けていた石なんだ。それを小さいころに魔除けってもらったんだ。」
「そんなに大事なものだったの?」
ケイトは驚きました。
「ケイトはいつもさみしそうで、一人にするのが心配だった。だからこの石があれば守ってくれると思ったんだ。
それを二人で持てるなんてこんな嬉しいことないよ。」
ジョニーは石を握りしめました。
「それに人間の技術はすごいんだな。あの石、穴をあけて紐を通していたんだけど、そこから割れることが何度もあった。
枠にはめれば問題ないな。すばらしい。」
ケイトは珍しくしっかり話すジョニーをみて笑ってしまいました。
「でも加工を頼んだお店で、その石は珍しくてどこで手に入れたかって何度も聞かれて大変だったわ。」
二人は笑いながら
「不思議な出会いだね。」と繰り返しました。
「これからどうなるだろう。」
ジョニーは石を見ながら少し不安そうに言いました。
「大丈夫よ、ジョニー。みんながいるんだから。」
ケイトはにこにこしながら、そばで眠っていたプレッチェロの頭をなでました。