Monster Factory 『すべてのはじまり』
人間の世界へ
これはモンスターのジョニーが、はじめて人間の世界に来たときの話です。
「人間の世界では森の中の大きな植物に
赤い実が山ほどなっていて食べ放題らしい!」
と友人達が言うので、ウキウキワクワクしながら大きな森の中に入りました。
しかしいくら歩いても赤い実なんてありません。
たくさん歩きましたが結局見つからず足も痛くなったので休憩することに。
木の皮をはがしてもしゃもしゃ食べながら周りを見ていると
誰かが歩いてくる音がします。
ジョニーは人間に見られてはまずいと急いで木に隠れましたが
ケイトはもうジョニーに気づいていました。
「何で隠れるの?」
とケイトは近くまで行って聞きました。
ジョニーは何も言わずにちょこっとケイトを見ました。
ケイトは木から半分赤頭を出したジョニーを見て笑いながら
「妖精じゃないね?真っ赤な顔だものね」
と言い、ジョニーが隠れている木の反対側へ座りました。
「隠れなくてもいいのに。」
ジョニーはケイトが反対向きに座ったので、もっと顔を出し、よくみてみました。
思っていたより小さな人間が座っています。
すると突然ケイトが振り返って「私この森が大好きなんだ。」と微笑みました。
ジョニーは目が合ってびっくりしましたが
それよりもケイトの綺麗な目の色に感動していました。
ジョニーは元の位置に戻ってケイトの様子を見ながらゆっくり話しました。
「人間の目は小さいのによくできてるな。」
ケイトは怖がりもせず
「ママと同じ目の色なの。もういないんだけどね。」
と少し微笑みながら下をむいてしまいました。
「俺にもいないよ。」
ジョニーはその場にドサッと座り話を続けました。
「でも家族みたいな友達はたくさんいるから」
「いいなぁ。」
ケイトはまだ下を向いて腕に巻いてあるものを見ています。
「俺の世界では小さいモンスターほど、いつもみんなで一緒にいるんだけどな。
小さい人間の世界はそうじゃないのか。」
「うん。」
ケイトはゆっくり立ち上がってスカートをはたきました。
「今日はそろそろ 行かないといけないの。また会える?」
ジョニーはとても悩みました。会えるとは言えませんでした。
ケイトはジョニーが悩んでいるのがわかったので
「じゃぁ今度会えた時にまたお話しようね。きっとまた来たくなるよ。」
と手を出しました。ジョニーも真っ赤な手を出し握手をして分かれました。
その後、何年も何年も、ケイトが大きくなるまでずっと、
ジョニーとケイトは、この森で会って自分達の報告をしたりしていました。
そしてある時、ジョニーはケイトと出会った頃から
ずっと思っていたことをケイトに話してみました。
「俺、人間の世界に住んでみたい!」
ケイトはとても驚きましたが、すぐに真剣な顔になり腕を組みました。
「それなら、パパが生きてる時に動いていた工場を使う?
今は誰も使っていないから自由に使っていいよ。
困ったことがあれば私がしてあげる。
私もジョニーがこっちにいてくれたらうれしいなぁ。」
「そうか!じゃ頼む。友達に話してみるから。」
ジョニーはにやにやしながら自分の首にかかっていた
青い石の首飾りをケイトに渡しました。
「やる。お礼に。」
「ありがとう。人が…モンスターが集まるといいね。」
ケイトは青い石を見ながら微笑みました。
モンスターファクトリーはその2年後に工場として動き出しました。
動き出すまでに長い時間がかかったのは、
モンスター達が人間の世界へ行くなんて考えられないと言い出したからです。
しかし今ではたくさんのモンスター達が
人間の世界とモンスターの世界を行き来していて
工場の周りにたくさんの花を植えて種を収穫しています。
モンスターファクトリーのモンスターはみんなジョニーの大切な家族です。
もちろん、ケイトも。