私と5つの物語。
第1章【幸せの物語】
昔、ある森には1人の美しい女神、ティアナとその女神によって創られた3匹の妖精、アルロ・マコル・ユノエが住んでいました。
ティアナたちは森から出ることはなく、ただ平穏な日々を送っていました。
綺麗な湖、風になびく木々、自然のさわやかな香り。
なにもかもが美しく、その環境は誰の手も加えられていない。
自然体そのものだった。
その森に人が立ち入ることはできない、ティアナの力によって守られた神聖な森。
幸せで平和な毎日。
でも、そんなある日、その幸せは壊れてしまった。
ティアナが病にかかってしまったのです。
「ティアナ様、貴女が苦しいと私たちも苦しいです」
アルロが少し不安げな声でそう言った。
日に日にアルロたちは弱っていった。
ティアナもどんどん衰弱していった。
そして治ることなく、数日が過ぎた。
「・・・・・・ティ、ア・・・ナ、様・・・・・・」
マコルの苦しそうな声がティアナの耳に届いた。
が、返事をする気力さえ残っていなかった。
病はティアナの体を蝕み、そして繋がっていた妖精や森にも影響を及ぼした。
美しかった森はたったの数日でその色を変えた。
3匹は1匹、また1匹と順々に力を失い、消えていった。
楽しくて平穏だった森が静かで寂しいものになった。
(1人は寂しい、つまらない、苦しい・・・・・・)
ティアナは精神的にも苦しみを感じるようになっていた。
そんな衰弱しきっていた、ティアナの前に1人の青年が現れた。
「っ!大丈夫ですか!」
青年はティアナを見るなり、近付いてきて、ティアナの手を握った。
重なった手からパッと光が溢れる。
温かくて、やわらかい光。
苦しかったのに、どんどん心地良くなっていく。
あまりの心地良さにティアナは目を閉じた。
まるで意識が遠のいていくような、そんな感覚におそわれながら・・・・・・。