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流星迷路 第1迷路

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 大学受験に皆が現実逃避し始めた頃。美奈と俺は、俺の家で勉強していた。
「夏也、ここどうやるの?」
「ん? ああ、ここか。ここはな・・・」
美奈は頑張っていた。国立と比べたら付属の女子校のほうがランクが低いけど、それでもかなり高いランクだった。少なくとも楼汰が行くところよりは3つ4つ上のランクだった。七瀬は美奈と同じ女子校に行くらしい。私が美奈を俺の代わりに守るっとかなんとか言ってたけど、女子校で何をどう助けるのか・・・。
「夏也、ここ合ってる? みな頑張ったんだけど」
「あ、ああ・・・ん・・・うん。合ってるよ」
「やった。次の問題解くね」
「おう、がんば」
頑張る美奈は可愛かった。一生懸命で、たまに間違えて、それさえも可愛くて。大学なんて行かないで、この時間が永遠に続けばいいと思った。

美奈と一緒にいれれば・・・それでいい

俺はそれしか考えなかった。大学に行ったら会える時間が減っちまう。そんなのは嫌だった。家はそこまで離れてないけど・・・。一緒に帰ったり、一緒に昼ごはん食べたり。それができなくなるなんて嫌だった。

 美奈が買い物したいと言い出した。勉強はいいのか?って聞いたら今日の2、3時間だけと言った。勉強しないと駄目だろって言っても一切聞かなかった。
「欲しいものがあるの」
 女子向けの可愛らしい店に入って行った。そして、星座をモチーフにしたキーホルダーを2つ買った。
「2つもいらないだろ?」
「1こは夏也のだよ」
「俺の?」
「なくしちゃ駄目だからね!」
「あ、ああ。わかったよ」
その星座は*****だった。

 試験当日は案外早くやって来た。もう少し・・・美奈と一緒に学校生活を送りたかった。
「美奈、お前は頑張った。絶対受かる。俺が保障してやる」
「うん。夏也も頑張ってね」
美奈の家の前でこう言い合った。美奈の背中が遠くなるととても寂しかった。嫌だった。美奈は振り返らなかった。振り返ったのは俺だけだった。
 試験が終わって美奈は俺の家に来た。
「疲れたー」
「でも、笑顔じゃねーか」
「うん。夏也と勉強したところ、たくさん出たの。ありがとお」
「そっか。よかったな」
美奈は笑顔だった。勉強が無駄にならなかったみたいだ。この様子だと、受かるだろうな。
「夏也」
「美奈、何だ?」
「・・・ううん、なんでもない。大好きだよー」
「・・・?・・・ああ。俺も大好きだ」
一瞬何かを言おうとした。それを止めた。
「今、何言おうとした?」
「なんでもないよー」
「嘘つくな。ちゃんと言えって」
「なんでもないって言ってるでしょっ!」
美奈が大きな声を出したのを初めて聞いたかもしれない。そう思った。実際そうだけど。美奈が大きな声を出すなんて無かった。ましてや怒鳴るなんてしなかった。
「あ・・・。夏也・・・ご、ごめん・・・」
「いいよ・・・別に・・・」
「本当にごめんね・・・?」
「いいって言ってんだろっ!!」
気づいたら怒鳴っていた。美奈に向かって。美奈は何も悪くないのに。多分苛々してた・・・そういうことにしたい。何で怒鳴ったんだろう・・・。
「な、夏也・・・」
「何で、俺に隠し事するんだよっ!」
「か、隠し事っ?」
「女子校に行くって言ったときもそうだ・・・。楼汰や七瀬は知ってたのに、俺は知らなかった・・・!」
「だってだって、夏也には国立って言っちゃってた・・・から・・・」
「そんなの、変えたって怒らねーよ! 素直に言ってくれたらいいじゃねーか・・・」
「でも、夏也に一緒って言っちゃったし・・・夏也喜んでたし・・・」
こんなに美奈が俺のことを思ってくれたなんて。怒鳴ったことを後悔した。ここまで言って後悔したのは遅かった。
「みなは夏也を悲しませたくなかった・・・。それだけ・・・」
「・・・美奈。ごめん・・・怒鳴って」
「・・・もういい」
「え?」
美奈のもういいはとても怖かった。いつもの美奈じゃなかった。
「みな、もう帰るから」
「ちょっ、美奈、待てって。悪かったってば」
「もういいって言ったでしょ! 大学行ってる間は夏也に会わないから」
大学生の間は、会えない?美奈と・・・。
「は? そ、そんなの嫌だっ!」
「みなは決めたの! 夏也とは会わない!」
「そんなの実質別れるのと大差ないじゃねーかっ!」
「それでいいっ! 夏也なんか大っ嫌い!!」
美奈は泣きながら走って帰って行った。途中で転びそうだった。助けたかった。
「美奈っ!!!」
叫んでも美奈は振り返らなかった。

作品名:流星迷路 第1迷路 作家名:じゃす