Wish プロローグ2
-キーンコーンカーンコーン。
「ふぁ~。眠いなぁ」
今日の授業が終了し、俺は、机に突っ伏す。
「何だ~シケた面しやがってよ。もう眠いの??だらしがないな」
「眠いものは眠いんだよ~」
朝からドタバタしてたし、そんでもって激しい運動したからな。
これじゃ誰でも疲れるし眠くなるだろう。無理もないはずだ。
「ったく、情けねーな。気合が足りないんじゃないの?」
「そうだな。んじゃ、ここは一発俺が渇を入れてやろう」
どっかで聞いた声が俺たちのやり取りに割って入ってきた。ってこの声は暁か。
よくあの状態で戻って来れたもんだ。
茜も俺と同じこと思っていたみたいで帰還した暁に、
「あれ?暁、戻ってたの?よくご無事で」
「ふん!あんなもんじゃ俺は崩せねーぜ。何てったって俺は、鋼鉄の暁と世間じゃ恐れられているんだからな」
嘘つけ。どこの世間だ、ソレは。
なぁにが鋼鉄の暁だ。さっき思いっきり気絶してただろうが。
気絶していたお前を俺が保健室に運んだんだから間違えない。
それとも気絶したことも保健室にいた記憶でも飛んじまったのか?
「まぁいい……。俺は寝るぞ~おやすみ~」
「って、ちょっと春斗~どさくさに紛れて寝るな~起きろって」
俺は答えるのも面倒になったので寝ることに全神経を睡眠モードへ総動員させていた。
「無理もないさ、どうせ、昨晩も『ハルト・ザ・シスター』と戯れていたんだろう」
すると、俺たちの輪に意味深にニタニタ笑いながら新たに第3者の介入が訪れたようだ。
…ってちょっとマテ。今何か俺のこと言っていなかったか?
「昨夜……戯れる……って…まさか!!」
「おっと、言うんじゃないぞ~それは、野暮ってものさ」
「でも、まさか…いや、前からシスコンだとは思っていたけれど……それ以上だったとは……」
「って誰がシスコンだッ!!誤解を招く発言はやめろ!!というか『昨晩も』ってどういう意味だ?コラ!凍弥」
「そのままの意味だ。理解したか?」
「しねーよ!馬鹿ッ!」
「そうか?かえではどう思う?」
「ん~ここは、シスコンっていう設定にしておけば後々おいしい展開があるかもヨ☆」
意味深ににやにやと笑うかえで。
「ねーよ!!…って、ギャルゲなんかと一緒にするなよ??」
いったいこいつの頭の中はどうなってんだか…。
暇があれば解析してみたいもんだ。
「き…貴様あああぁぁぁああああッ!!俺の明日香ちゃんになんてことをッ!!」
掴みかかってきた暁の手をヒラリとかわし、逆に顔を掴みアイアンクロー。
「こらこら、お前まで話をややこしくするなよ??それと、俺の妹を勝手にお前の所有物にすんじゃねぇッ!!」
アイアンクローを解いて、息をつく間もないまま正拳突き。
「ぐぼぉはぁッ!!」
面白いくらいに見えない魔の波動を受けたかのように吹っ飛んだ。
見事なまでに清々しい響きと手ごたえのある爽快感という感触に思わず心の中でガッツポーズ。
「すんなッ!!!くっそぉッ!!何だっていうんだよッ!!俺は明日香ちゃんの騎士なんだッ!!!もうロミオとジュリエットを凌駕するパートナーと言っても過言じゃねぇッ!!!いいか、俺は明日香ちゃんを愛するが故のナイトの当然な務めなわけだ。うっとおしいくらいに飛び回る煩い羽虫からの防衛。近寄る男どもを見るだけで心が乱心掻き乱され、とてもじゃないが正気でいられる自信がねぇッ!!!」
お前が言うな。おいおい、目がマジなんだけど。
まずは、シェイクスピアに謝れ、ロミジュリにもな。
それに、言わせてもらえばそういうお前も俺から見れば煩い羽虫だ。
「俺は可憐で清楚、無垢なる純情な花のつぼみを守りたいッ!!!愛、イッツLOVEッ!!!そう、これは愛なんだッ!!!!愛があってこその過剰反応だってのに、それが悪いとでも言うのかッ!?!?」
「当たり前だッ!!!『変質者』は誰だってそう言うんだよッ!!!そんなヤツが軽々しく愛を口にすんじゃねぇッ!!!まずは、その愛を学んできやがれってんだッ!!!生まれ変わってな???アンダースタン??」
俺は問答無用に暁の脳天に踵落としを叩き込んでやったのだ。
「ひぎゃあああぁああああッ!!!!」
そのまま暁は背骨が変な方向に曲がって、その場に逆U字で倒れていった。
「は…春斗。それ、やりすぎだって…。こいつ白目向いて泡吹いてるし…」
「まぁまぁ、照れなさんなって、ヒナタン!」
「照れてないわッ!それと、ヒナタンはやめろ!」
「ハハハ。冗談だ、まぁそんなに怒りなさんな、出来心でつい…な!」
その出来心でつい毎回俺をネタにするのは出来心でも何でもないと思うんだがな『俺は』。
「ったく、俺をネタにするのだけはやめろよな、凍弥」
「残念。まだ、とっておきのマル秘のネタがあるんだけどな~」
「頼むから、それは、このまま未来永劫、眠らせておいてくれ」
「お、なんだなんだその週刊誌のエロティックな袋とじネタはッ??」
「ググレ、カスッ!!」
「OH、ジーザスッ!!!っていうか使いどころ違くねッ!?」
(゜Д゜)←こんな顔して暑苦しく呻いていた。
「そうか??」
しかし、いったいどんなネタだったんだろうか…。
ちょっと気になる。
「ん~でも、春斗と明日香ってホント仲がいいよね☆」
「そうか?普通だろ」
「いや~普通の兄妹と比較してもてんで歯が立たないよ。これは、間違いなく妹とのフラグが立ったね☆」
かえではビシッと親指を立てて、目をキラーンと光らせた。
「立ってない、立ってない。っていうか、かえで、ギャルゲ思考は止めろ」
「ん~でも、その方が何だかさ~ワクワク☆しない?」
「しない」
俺は、きっぱりとかえでに言ってやった。
それがこいつのためだからな。
「そうか?でも、一歩間違えると、恋仲に見えなくもないぞ」
恋仲って……。
俺たち、そんな風に見えてたのか。
凍弥 「何とまぁ、もう既に妹とのフラグを立てているなんてな…さっすがヒナタンだな」
純真な瞳で近寄り、ポンと優しく俺の肩に手を叩く。
「おい、わざとらしく不気味に微笑みかけるな。つーか、近いんだよ邪魔だどけ。ついでに面白がってますオーラを消しやがれ」
「な…ぬぁあああんだとぉぉおおおおおぉぉッッ!!」
気絶していたはずの暁が急に復活を遂げ立ち上がり、頭を抱えて大げさに叫ぶ。
「このエロゲ主人公があぁぁあああッ!!!!おんのれええぇぇえええッ!!春斗よ、後で体育館裏まで来やがれッ!!明日香ちゃんを渡してなるものかッ!!俺と戦えッ!!」
「いや、行かんし戦わんから勝手にやってろ」
ついでに、エロゲ主人公じゃねぇからな。
「なんだとぉッ!?…クッ!!逃げ出した腰抜け主人公がぁッ!!」
「だから、そのネタは、もうええって」
いろんな意味でアウトだからな、ソレ。
「ところで、お前たちは、春休みはどうだったんだ?」
「何だよ、藪から棒に。まぁ、俺は、これといって、特にないな。」
なんか無駄に過ごした気がする…うん。
「あたしは、ゲームとかマンガを読んだりして過ごしたかな」
作品名:Wish プロローグ2 作家名:秋月かのん