Wish プロローグ
<1章=プロローグ>
…泣いている。
…誰かが泣いている。
膝を落とし、地につけて、顔を俯いてどうしようもないくらい悲しそうな顔で…。
両手には大事な何かを優しく抱きかかえ、言葉にもならない声で呼びかけながら…。
手は真っ赤な血に染まり、ポタポタと音を立てて地面に落ちる。
それが、地に真っ赤な鮮血が広がっていく。
どうして、こんなことになってしまったんだ。
どうして、私はここに存在しているんだろう。
つーっと頬に冷たい何かが流れた。
どうやらそれは、目から次から次へと溢れ、頬を伝い流れているようだった。
あぁ、私は泣いているのか。
私は無意識に涙を流し、泣いているようだった。
それと同時に視界がぼやけ、見えていた世界が歪み始める。
私の大好きだったあなたも最後には見えなくなってしまう。
あぁ、世界が終わる。
世界が闇に染まっていくのがわかる。
でも、これが夢であったのなら、現実ではないというのであれば、言って欲しい。
今すぐにも目を覚まして欲しい。これは悪い夢だったんだよって安心させて欲しい。
私のこの不安を、消え行く恐怖を取り除く安心できる言葉をどうかあなたの声で。
大好きなあなたの腕の中で抱かれるように…。
目を閉じる彼女を見守るように、彼は文字通り、ただ見ていることしか出来なかった。
はっと我に返り、気がついた時には、彼女は動かない『モノ』となってしまっていた。
何度も何度も必死に呼びかけるが、再び目を覚ますことはなかった。
どうして、こんなことになってしまったんだろう。
どうして、僕は、僕だけがここに存在してしまったんだろうか。
…いや、悲しいんじゃない。
何も出来ずただその光景を見ていることしかできない自分の無力さに嘆いているんだ。
…そう、無力な自分。目の前に守らなければならない大切なもの。
…そう、守りたい大切な人がすぐ近くに手を伸ばせば今にも届きそうなくらいに。
…そう、守らなければいけないんだ。だって、大切だから…。失いたくないくらいに
本当に大切なんだ。大切…だったはずなのに。
…守りたい。
…守りたかった。
…守らなければいけなかったんだ。
こんな無力な自分でも助けを求めていたのだから…。
彼女の顔が、最後の時のあの顔が脳裏に焼きついて、彼女が僕をじっと見つめてくる。
…そう、まるで今も助けを求めるかのように…こっちを向いてずっとそのか弱く。
そして、脆くも果かない瞳でじっと見つめている。
その瞳を見ると、胸が…心がちくりと痛む。
それは段々とズキズキと強い痛みに変わって心の中を蝕んでいく。
…すっと、こっちに向かってか弱くもそのスラっと細い腕が伸びてくる。
まるで、それはしゃぼん玉のようにほんの些細なことでぱっと割れてしまうかのようだった。…そう、彼女は助けを求めているんだ。今にもここから消えてなくなりそうな果かなく、そして、小さな光。
今もずっと手を伸ばして助けを求めている。
その手を掴んで引っ張り上げ、この暗闇の中から救いを求めるその手…。
…だけど、その手を掴むことは出来なかった。
…掴むことさえ出来なかった。
…掴むことも許してはくれなかった。
なぜなら、無力…だったから。彼女の手を掴むことも出来ない非力な自分。
目の前にいる大切な人を抱きしめられない自分。
…そして、救い出せなかった無力な自分。
…なぜ??
…なぜ、こんなことになってしまったんだろう??
…なぜ、彼女を救い出せなかったんだろう??
…なぜ、無力なんだろう??
この身を引き換えにして救い出せるものなら迷わず、躊躇わず捧げたであろう。
この身を粉にしてでも救い出せるものなら迷わず、躊躇わず身を投じただろう。
…でも、それは許されなかった。
…なぜ、許されなかったんだろう??
誰が許さなかったんだろう??
…それは、無力な自分自身だった。
…泣いていた。
…誰かが泣いていた。
…膝を落とし、地につけて、その生気をなくし、どうしようもないくらいに泣き叫び
自分の無力さに嘆いている者がいる。
…それは、僕だった。
『お母さん、お父さん魔法って本当にあるの??』
幼いころ誰しも子供心にそんなことを思ったことはないだろうか??
絵本や子供向けのアニメ、魔法を題材にしたものは今も昔もいくつもあった。
だが実際、魔法といのはファンタジー、フィクションな存在だ。
両親に聞いたところで、夢を壊しちゃいかんという親心で『あるよ』と答えは当然かの
ように返ってくるだろうさ。いずれはイヤでも気付かされるがな。
どっちかつーとそっちの方がグサリとくるな。
今の今までずっと信じてたものが空想上のフィクションファンタジー、だなんてよ。
そうさ、魔法っつーもんはあるわきゃない。現実は実に厳しい。
人々が追い求めるもの、それは無限の幻想空想《ロマン》だ。
だからこそ俺は声を大にしてこれだけは言いたい。
『それでも、あってほしい』と。
『魔法はあるんだ』と。
そう、どこかにひっそり魔法使いの住む村があって、そこでは魔法使いが華麗にバンバン魔法やら何かを魔法の杖で使ってて、絵に描いたような老婆が大釜で毒々しく紫色をした謎の液体をグツグツ煮えたぎらせ、謎アイテムを組成していたりな。
そうやって、心のどこかであるんじゃないか。
信じていれば存在するんじゃないかって思ったりしたりしないか??
まぁ、言ってみれば要は、サンタクロースと一緒のようなもんだ。
何??俺はどうだったかって??
そりゃ決まってるさ。信じていたさ。
サンタクロースも魔法もな。
その方がずっと楽しそうだからな。
最初からないって決め付けて信じないよりも、あれ??ひょっとしてあるんじゃね??
って思っていた方がロマンがあって想像巡らせて楽しいじゃないか。
未知なるものを追い続ける…!!
いいねぇ、ワクワクしてくるじゃないか。
まさに、オラすっげぇワクワクすっぞッ!!!って思わず言いたくなっちまうくらいな。
すまん、ホントに言いたかっただけだ。著作権的ものは大丈夫か、コレ。
まぁなんだ、魔法。
そう、その言葉の響きに誰でも心を惹きつけられ、魔法に憧れてしまう。
それこそ、そこに魔法はあるんじゃないかって俺は思うんだ。
まぁ、散々物語の序盤でわけのわからんことから語り始めたが、俺が何が言いたいのか
っていうとだが…。
そんな存在するはずもないファンタジーの世界がココにあったという、ただそれだけの
ことだ。
-ピピピピピッ!!
うぅん……。
「う……もう、朝か…ふぁぁぁ……」
まだ眠たい目を擦りながらも、目覚まし時計を止める。
「…うーん。それにしても、今日も相変わらずいい天気だな……」
眠気を振り払うかのように大きく伸びをし、そして、ベッドから降りる。
俺は、勢いよくカーテンと窓を開け放つ。
窓から差し込む日差しが、とても眩しい。そして、春を予感させるそよ風…。
もうすっかり春なんだな。
「って…ッ!!感傷に浸っている場合じゃないな。せっかくの春休みなんだから、もっと有意義に過ごさないとな。ってことで寝る」
…泣いている。
…誰かが泣いている。
膝を落とし、地につけて、顔を俯いてどうしようもないくらい悲しそうな顔で…。
両手には大事な何かを優しく抱きかかえ、言葉にもならない声で呼びかけながら…。
手は真っ赤な血に染まり、ポタポタと音を立てて地面に落ちる。
それが、地に真っ赤な鮮血が広がっていく。
どうして、こんなことになってしまったんだ。
どうして、私はここに存在しているんだろう。
つーっと頬に冷たい何かが流れた。
どうやらそれは、目から次から次へと溢れ、頬を伝い流れているようだった。
あぁ、私は泣いているのか。
私は無意識に涙を流し、泣いているようだった。
それと同時に視界がぼやけ、見えていた世界が歪み始める。
私の大好きだったあなたも最後には見えなくなってしまう。
あぁ、世界が終わる。
世界が闇に染まっていくのがわかる。
でも、これが夢であったのなら、現実ではないというのであれば、言って欲しい。
今すぐにも目を覚まして欲しい。これは悪い夢だったんだよって安心させて欲しい。
私のこの不安を、消え行く恐怖を取り除く安心できる言葉をどうかあなたの声で。
大好きなあなたの腕の中で抱かれるように…。
目を閉じる彼女を見守るように、彼は文字通り、ただ見ていることしか出来なかった。
はっと我に返り、気がついた時には、彼女は動かない『モノ』となってしまっていた。
何度も何度も必死に呼びかけるが、再び目を覚ますことはなかった。
どうして、こんなことになってしまったんだろう。
どうして、僕は、僕だけがここに存在してしまったんだろうか。
…いや、悲しいんじゃない。
何も出来ずただその光景を見ていることしかできない自分の無力さに嘆いているんだ。
…そう、無力な自分。目の前に守らなければならない大切なもの。
…そう、守りたい大切な人がすぐ近くに手を伸ばせば今にも届きそうなくらいに。
…そう、守らなければいけないんだ。だって、大切だから…。失いたくないくらいに
本当に大切なんだ。大切…だったはずなのに。
…守りたい。
…守りたかった。
…守らなければいけなかったんだ。
こんな無力な自分でも助けを求めていたのだから…。
彼女の顔が、最後の時のあの顔が脳裏に焼きついて、彼女が僕をじっと見つめてくる。
…そう、まるで今も助けを求めるかのように…こっちを向いてずっとそのか弱く。
そして、脆くも果かない瞳でじっと見つめている。
その瞳を見ると、胸が…心がちくりと痛む。
それは段々とズキズキと強い痛みに変わって心の中を蝕んでいく。
…すっと、こっちに向かってか弱くもそのスラっと細い腕が伸びてくる。
まるで、それはしゃぼん玉のようにほんの些細なことでぱっと割れてしまうかのようだった。…そう、彼女は助けを求めているんだ。今にもここから消えてなくなりそうな果かなく、そして、小さな光。
今もずっと手を伸ばして助けを求めている。
その手を掴んで引っ張り上げ、この暗闇の中から救いを求めるその手…。
…だけど、その手を掴むことは出来なかった。
…掴むことさえ出来なかった。
…掴むことも許してはくれなかった。
なぜなら、無力…だったから。彼女の手を掴むことも出来ない非力な自分。
目の前にいる大切な人を抱きしめられない自分。
…そして、救い出せなかった無力な自分。
…なぜ??
…なぜ、こんなことになってしまったんだろう??
…なぜ、彼女を救い出せなかったんだろう??
…なぜ、無力なんだろう??
この身を引き換えにして救い出せるものなら迷わず、躊躇わず捧げたであろう。
この身を粉にしてでも救い出せるものなら迷わず、躊躇わず身を投じただろう。
…でも、それは許されなかった。
…なぜ、許されなかったんだろう??
誰が許さなかったんだろう??
…それは、無力な自分自身だった。
…泣いていた。
…誰かが泣いていた。
…膝を落とし、地につけて、その生気をなくし、どうしようもないくらいに泣き叫び
自分の無力さに嘆いている者がいる。
…それは、僕だった。
『お母さん、お父さん魔法って本当にあるの??』
幼いころ誰しも子供心にそんなことを思ったことはないだろうか??
絵本や子供向けのアニメ、魔法を題材にしたものは今も昔もいくつもあった。
だが実際、魔法といのはファンタジー、フィクションな存在だ。
両親に聞いたところで、夢を壊しちゃいかんという親心で『あるよ』と答えは当然かの
ように返ってくるだろうさ。いずれはイヤでも気付かされるがな。
どっちかつーとそっちの方がグサリとくるな。
今の今までずっと信じてたものが空想上のフィクションファンタジー、だなんてよ。
そうさ、魔法っつーもんはあるわきゃない。現実は実に厳しい。
人々が追い求めるもの、それは無限の幻想空想《ロマン》だ。
だからこそ俺は声を大にしてこれだけは言いたい。
『それでも、あってほしい』と。
『魔法はあるんだ』と。
そう、どこかにひっそり魔法使いの住む村があって、そこでは魔法使いが華麗にバンバン魔法やら何かを魔法の杖で使ってて、絵に描いたような老婆が大釜で毒々しく紫色をした謎の液体をグツグツ煮えたぎらせ、謎アイテムを組成していたりな。
そうやって、心のどこかであるんじゃないか。
信じていれば存在するんじゃないかって思ったりしたりしないか??
まぁ、言ってみれば要は、サンタクロースと一緒のようなもんだ。
何??俺はどうだったかって??
そりゃ決まってるさ。信じていたさ。
サンタクロースも魔法もな。
その方がずっと楽しそうだからな。
最初からないって決め付けて信じないよりも、あれ??ひょっとしてあるんじゃね??
って思っていた方がロマンがあって想像巡らせて楽しいじゃないか。
未知なるものを追い続ける…!!
いいねぇ、ワクワクしてくるじゃないか。
まさに、オラすっげぇワクワクすっぞッ!!!って思わず言いたくなっちまうくらいな。
すまん、ホントに言いたかっただけだ。著作権的ものは大丈夫か、コレ。
まぁなんだ、魔法。
そう、その言葉の響きに誰でも心を惹きつけられ、魔法に憧れてしまう。
それこそ、そこに魔法はあるんじゃないかって俺は思うんだ。
まぁ、散々物語の序盤でわけのわからんことから語り始めたが、俺が何が言いたいのか
っていうとだが…。
そんな存在するはずもないファンタジーの世界がココにあったという、ただそれだけの
ことだ。
-ピピピピピッ!!
うぅん……。
「う……もう、朝か…ふぁぁぁ……」
まだ眠たい目を擦りながらも、目覚まし時計を止める。
「…うーん。それにしても、今日も相変わらずいい天気だな……」
眠気を振り払うかのように大きく伸びをし、そして、ベッドから降りる。
俺は、勢いよくカーテンと窓を開け放つ。
窓から差し込む日差しが、とても眩しい。そして、春を予感させるそよ風…。
もうすっかり春なんだな。
「って…ッ!!感傷に浸っている場合じゃないな。せっかくの春休みなんだから、もっと有意義に過ごさないとな。ってことで寝る」
作品名:Wish プロローグ 作家名:秋月かのん