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天柳 啓介
天柳 啓介
novelistID. 50281
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ログダム

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 校舎裏は日陰になっており、暦も10月とあって辺りはすっかり暗くなっていた。
「暗いね……」

 いつも勝気な裕子がなんとなく俺の傍に寄る。

「ところで銅島さんはどこいったんだ?」

 辺りを見回すが人影らしいものは見当たらなかった。

 「研ちゃん、あれ!」
 と、裕子の指差す方を見ると、壁にうっすらと紫色の丸い何かが描かれていた。

「なんだ?」
 近寄るとそれは確かに現れた。
 高さはちょうど研二達の背を頭一つ超えるくらいで、横もそのくらいの大きさのそれは、よくファンタジーものに出てくるような紋章を彷彿とさせるものだった。

「なんだこれ……」
 おもむろに触って確かめる。すると、


「ダ、ダメ!!!」


 暗闇を切り裂くような鋭い声に俺は驚き、手を離した。
 すると、紫色の紋章が淡く光りだす。その光は次第に強くなり眩しいほどまでになった。

「そんな……」
 後ろから落胆するような声が聞こえた。声からして、先ほど叫んだ人物らしい。

「あなた達、これに触ったの!?」
 若干怒気が入り混じった声に少しだけ威圧される。

「触ったのは俺だけだ」

「そう、あなただけなのね……」

 その言葉を聞いてなぜか安心したのか、その場にへたれこんでしまった。
「お、おい!大丈夫か?」

 彼女に駆け寄ると、後ろの紫の紋章が光を発しなくなった。

「あ、戻った……」
 そう漏らす裕子。

「大丈夫か?」
 その女性に話しかける。

「ええ……。大丈夫よ。」

 この顔に見覚えがある。

「もしかして君……堂島咲さん?」
「どうして私の名前を……?」
「こいつが」

 裕子を見る。
「こんばんわ。咲ちゃん」

「あ、留目先輩……どうして?」
「私この人…櫻谷研二と一緒に帰る前に校舎裏に向かうあなたを見かけて、気になって追いかけてきてたの。ごめんなさい」
 久々に裕子にフルネームで呼ばれたことにちょっとだけ懐かしさを感じた。
「そう、だったんですか」

「こんなところじゃあれだから明るいところ行こ?咲ちゃん」
「はい。でも、できれば人のあまりいないところでお願いします。話さなくちゃいけないこともあるので……」

 女子の会話に水を差すのは気が引けたが、研二は案を出す。

「学食とかどうだ?今の時間なら人も少ないだろ」
「あ、そうだね」

 こうして俺達は学食に向かった。
作品名:ログダム 作家名:天柳 啓介