ログダム
校舎裏は日陰になっており、暦も10月とあって辺りはすっかり暗くなっていた。
「暗いね……」
いつも勝気な裕子がなんとなく俺の傍に寄る。
「ところで銅島さんはどこいったんだ?」
辺りを見回すが人影らしいものは見当たらなかった。
「研ちゃん、あれ!」
と、裕子の指差す方を見ると、壁にうっすらと紫色の丸い何かが描かれていた。
「なんだ?」
近寄るとそれは確かに現れた。
高さはちょうど研二達の背を頭一つ超えるくらいで、横もそのくらいの大きさのそれは、よくファンタジーものに出てくるような紋章を彷彿とさせるものだった。
「なんだこれ……」
おもむろに触って確かめる。すると、
「ダ、ダメ!!!」
暗闇を切り裂くような鋭い声に俺は驚き、手を離した。
すると、紫色の紋章が淡く光りだす。その光は次第に強くなり眩しいほどまでになった。
「そんな……」
後ろから落胆するような声が聞こえた。声からして、先ほど叫んだ人物らしい。
「あなた達、これに触ったの!?」
若干怒気が入り混じった声に少しだけ威圧される。
「触ったのは俺だけだ」
「そう、あなただけなのね……」
その言葉を聞いてなぜか安心したのか、その場にへたれこんでしまった。
「お、おい!大丈夫か?」
彼女に駆け寄ると、後ろの紫の紋章が光を発しなくなった。
「あ、戻った……」
そう漏らす裕子。
「大丈夫か?」
その女性に話しかける。
「ええ……。大丈夫よ。」
この顔に見覚えがある。
「もしかして君……堂島咲さん?」
「どうして私の名前を……?」
「こいつが」
裕子を見る。
「こんばんわ。咲ちゃん」
「あ、留目先輩……どうして?」
「私この人…櫻谷研二と一緒に帰る前に校舎裏に向かうあなたを見かけて、気になって追いかけてきてたの。ごめんなさい」
久々に裕子にフルネームで呼ばれたことにちょっとだけ懐かしさを感じた。
「そう、だったんですか」
「こんなところじゃあれだから明るいところ行こ?咲ちゃん」
「はい。でも、できれば人のあまりいないところでお願いします。話さなくちゃいけないこともあるので……」
女子の会話に水を差すのは気が引けたが、研二は案を出す。
「学食とかどうだ?今の時間なら人も少ないだろ」
「あ、そうだね」
こうして俺達は学食に向かった。