らふまにのふ
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私は、病院から霊場に向かう車の中にいた。身近にいる人を喪った時、胸にぽっかりと穴が開いたようなという人がいる。しかし、私の胸にはもやっとした重いものが詰まっているような気がした。それは泣いてしまえば無くなるような気もする。ここ数年心の底から笑うことも、泣くこともできずに過ごしてきたせいかもしれない。泣くにしては、車窓から見える風景はどこも変わった所のない普通の日常が見える。そしてこれから煩わしい諸事が待っている。
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思考と夢の混じった、眠っていたのかどうかはっきりとしない明け方、泣いていた。涙は確かに胸につかえていたものを流し去って、軽くなった私は宙に浮くのではないかと思える程だった。
あなたが去った夜
片側に寄せて布団を敷いた
ずうっと真ん中に敷いていたのに
その空間はもう埋まることはない
目覚めた時
眼と鼻と
もしかしたら口からも
湧き出すようなそれを
トイレの中で
数箇所から同時に出ている水分に
おかしくなったが
泣くと笑いは一緒に出来なくて
中途半端なまま
洟をかむ
人間というものと
自分とを
知ったような気にもなって
軽くなった私は
半分宙に浮いていた