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月が綺麗な夜だから。

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「じゃあ、おやすみなさい」
無人のリビングで、小さめに声を発し、給湯器の電源も切った。
リビングの壁の電灯スイッチを 消す。わたしの後ろに闇ができる。振り返るな。真っ直ぐ部屋へ向かえと指令するわたしと 風呂上りに 一杯の飲み物を所望せよと要求する体。どちらを優先すべきかと二秒考えた。本日の勝者、体! 
もう一度 リビングの壁の電灯スイッチを入れると 冷蔵庫へと向かった。
この冷蔵庫を開けて やあ!と何か居たら面白いだろうか。ダメだ。冷蔵庫に保管されるものといったら、だいたいは・・・と決まっている。グラス片手に冷蔵庫の取っ手を引く。
わぁっ。何やら崩れ落ちてきた。ぐにゃりとした感触を手首辺りで受け止めた。糸こんにゃく。見渡す食材、残りのラップをかけた器を見ると すき焼きもどき。食べたかったな。
茶をグラスに注ぎ、ドアを閉めた。迷ったものの 冷えた茶が喉を通り抜けるのがいい。
今度こそリビングの壁の電灯スイッチを切り、部屋へと行った。
閉まったカーテンの隙間から 仄かな光。たぶん月明かりね。
わたしは、カーテンをめくった。ギョ、ドッキン。
窓に…… 窓のガラスに目が…… あん?違っ…… 
なんだ。枯れ葉だ。驚かせないでよ。って誰もその気はないわよね。わたしの見違い。

窓から見える 満月に近い月は とってもきれい。

もう、この枯れ葉が邪魔だわ。窓を開けて落としましょ。ぽいぽいっと。
うーん。これでゆっくり 美しい月と夜空が見られるわ。
部屋の明かりをつけなくても もう怖くない。
ギィーという感じで その窓に廊下の明かりが映りこんだ。ドアが開いたのだ。
「なに? おかあさん」
開いたドアのそこに おかあさんの姿はなかった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


「おとうさん、此処 トイレじゃないって」

「あ、すまん」


     ― 了 ―
作品名:月が綺麗な夜だから。 作家名:甜茶