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月が綺麗な夜だから。

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今夜は月が とってもきれい。駅からの帰り道、空ばかり見上げてしまったわ。
いつも仕事帰りは疲れと空腹、さらに駅の階段は足取りを手荷物よりも重く感じさせる。
なのに 今夜は駅舎から外に出て寒さに肩を竦めながら見上げた冬の夜空は、星のきらめきまで見えていた。此処でも 星がこんなに見えるのね。
そうよね。まだ最終電車ではなかったけれど 時計の針はてっぺん回りそう。明りのある店なんてコンビニか深夜営業の飲食店くらい。
最寄り駅から 早足で数分と便利なところに住んではいても 家に着くまでやっぱり……

コ・ワ・イ

だって人が居ないんですもの。たまにすれ違う人がいても 防寒か 風邪引きか コートの襟を立てて マフラーして マスクして……って今のわたしみたい。
それに今夜は 月明りで辺りも良く見える。可笑しなものまで見えてしまいそう。
満月まで あとわずか。少し足りない月の形が 歪んで見える。
いっそ満月の日ならば 現れるのはバンパイヤか狼男。正体はわかってるわ。その時は 鞄にニンニクチップと銀の匙を潜ませておけば 逃げる時間くらいできるしね。それに月明かりはもっともっと明るくて 気持ちも真ん丸。うさぎさんが見守っていてくれるもの。心強い。

実はわたし―――怖がり―――

あ。
今の音 何? たしか斜め後ろ。しかも道を挟んで反対側。ちら見なら 大丈夫よね。
なぁんだ。
もうー、明日の朝出してよ。ゴミをあさってるカラスじゃないの。でもこんな夜中に居るなんて、本当はカラスじゃなくて 派バッチカラスね。みんなと同じ朝だと餌にありつけなくて一羽抜け駆けしているんだわ。
さてと、着いた。でも 建物の通路の電灯切れかけてる。お!消えた。あ。点いた。きゃっ!また消えた。早く鍵、鍵。あれ? ポケットにない。何処よ。何処に入れたかしら。
慌てないで考えましょ。ぃや!また点いた……のはいいか。消えない間に見つけなくっちゃ。えぇっと、コートから定期券入れを出そうとして 引っかけて落としそうになったから……ははは、そうよ。此処。鞄の外ポケットに突っ込んだのよね。ほら、あった。
(ガチャ)しぃー。もう、家人は寝てるかなぁ。おかあさんは、サクサクじゃなくて ガッタンボチボチってパソコンをしてるかもね。ほら、部屋の奥のほうで ぼよぉんと明りが点いてる。どうせなら リビングを明るくしておいてよ。
「おかえり」
「あ、ただいまぁ。起きててくれたの?」
「ん。まあね。ご飯は?」
「代表の奥さんが おにぎり差し入れてくれたから もういいよ。お風呂入って寝る」
「あ、そう。じゃあお部屋温かくしておくね」
そう、おかあさんが言って 私は部屋へと向かう。
作品名:月が綺麗な夜だから。 作家名:甜茶