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ゾディアック 5

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私は正面の鏡窓に映る影を、じっと目を凝らし見つめた。
吸い込まれそうな漆喰の宇宙が渦巻くのを感じた。キーーーン・・ 高音の耳鳴りがして、何かが近づいて来る
地響きのような声が 鏡の中から聞こえて来た。


エム・・ セネジュ
レク イプ・・ ネプ・エフ 

ビリビリと空気を震わせ、シャンデリアがチリチリ・・と揺れた。


恐れるな
望みを・・ 知る


私の口から、声が出た。 私が思った?私が言ったのか?概念がグルグル回る・・
地響きも地の鳴るような声も、誰にも聞こえてはないようだった。
また、あの月食を見た後の苦痛が蘇り 激しい頭痛に襲われた。

Let me go ・・  Let me go ・・  Let me go ・・
イカセテ ・・ イカセテ ・・ イカセテ ・・ 私の意識が嘆願を繰り返す。


突然、鏡の闇の中から、青い鳥が飛び出して来た
ソフィアの身体の上にホログラムが現れた。

地下水の染み出る ヒンヤリとした冷気に包まれた
薄暗い地下聖堂に、女神像が立っていた。

その姿は、逆光に照らされハッキリとは見えないが
その輪郭は、赤と青のオーラに覆われていた。
右手には 大きな旗を掲げ、疾風に大きく棚引いていた。
彼女は左手を大きく上げると、指さした。

「 前へ・・ 」進め、という事か?

赤と青のソフィア・・  思った途端、
フラッシュバックが起こり、カヨの前世の騎士が傷を負いながら、星を目指し進む姿が現れた。
その還ろうとしていた場所が・・ 地下聖堂だったのか?
「 星を目指して・・ 」
凱旋、智慧の女神ソフィア タロッシュⅩⅦ

青い鳥がクルクルと頭上を回り・・ 私の眉間の菱形に入って来た
痛みはだんだん消えて行った。


また・・ 低い声がした。トート


ケト・・ ネペト ネフェレト・・ 

「 全ての、良きこと・・ 」



~ 37 ~


目の前に 次々現れる人間は、アセンデットが使う象だ
その象形を通し、可視的な物質世界を超え
無限に広がるイデアを知る。 

ここは外に閉じ込められた五感、意識の闇の世界。
状態の次元が真実 頭は使っているだけ

「 音と図形 」
地の底から響く声がし
ラムカの後ろに白い大きなヒヒが現れた
彼の名は・・ そうだ、トート。
音は・・ 私達の真実の存在ナディア。 図形とは・・ タロッシュ。



「 お疲れ様でした 」私はソフィアの身体を拭いて、声をかけた。
「 あ・・ 眠ってました。夢を見ていた気がするけど・・ 覚えてないわ 」細い身体が起き上がった。
「 大丈夫、きっとタロッシュで教えてくれますよ 」私は言った。

鏡窓の奥の・・ 気配が消えた
「 お疲れ様でした 」綺麗な花が添えられた お茶とお菓子の乗ったトレーを持って、ラムカが現れた。
「 まあ、綺麗。ラムカさんのアフタヌーンティは いつも楽しみよ! 」ソフィアが嬉しそうに言った。
「 あら、ありがとう。ゆっくりくつろいで下さってね 」ラムカが言った。

昔からそうだった・・ ラムカは物が持つ輝きを 品良く出し、光らせる事が好きだった。
自分こそが 物の真価を見抜けると 自負していた・・
教養の欠片も無い 下品な貴族達が、その価値も見抜けない宝石をジャラジャラと身に纏っているのを見ると
虫唾が走る・・ 自分こそ、それを持つのに相応しいと いつも思っていた。

前世のラムカは、無知と野卑を嫌う ソフィストケイトされた
宝石宝物コレクターで宮廷コンシェルジュだった。
カーテンの影から、ラムカとソフィアのやり取りを聞きながら 私は思った。

「 では、カードを繰って・・ 6枚出して下さい 」
シャッシャッ・・ ソフィアがカードを繰る音がして、パタパタ・・並べる音がした。
私は、自分の映った鏡窓を見つめていた。

「 Ⅱ女教皇、 ⅩⅦ希望、火の8、大地の4、風のエース、水の9 」ラムカの声がした。
「 過去に・・ 決意し、自立する出来事がありましたか? 」
「 はい、私は離婚をしました 」ソフィアが答えた。

「 現在・・ 希望と明るい見通しを持って 前へ進もうとしています。直観に従って下さい 」
「 あ、思い出したわ。さっきセラピーをして頂いてる最中に眠ってしまって・・ 夢で、前へ・・と誰か女の人が指さしていましたわ! 」
「 え?夢?」「 はい、マリオンさんが 今思い出せなくても、きっとタロッシュが教えてくれるって、本当ですね 」ソフィアが言った。

「 え・・そうなの・・ 」ラムカは動揺していた。

「 状態次元のタッチセラピーから自分の潜在意識を汲み取っても、概念化は相対次元の意識がやる事だからね。それがタロッシュだよ。
タロッシュで人は自分のナディアからのメッセージを理解できる。私とラムカは表裏一体だ 」カーテンの影から私が言った。
 
「 表裏一体・・ Ⅱ女教皇の背後にある二つの柱は、光と闇を表し、神秘からの英知を理解するという意味があります 」ラムカは言った。
「 さっきセラピーで見た夢は、この絵のような女性でした。ヒンヤリした薄暗い地下聖堂のような場所で、
右手に大きな旗を掲げ、左手で前を指差していました 」ソフィアは夢で私と同じビジョンを見ていたのだ。

「 それが、ソフィアさんのアセンデットからのメッセージなのね。直観に従って前へ進めという・・ 」ラムカが言った。
その時 フラッシュバックが起こり、鏡窓の闇から・・ ドーーン!・・ドーーン!・・地響きがした
現れたのは、赤と青のオーラを纏った女神だった。

右手には、疾風に棚引く大きな旗を掲げ、左手は「 前へ!」指差していた。
聖堂騎士を率いて前進する 前世のソフィアの姿
 
「 ⅩⅦ希望・・ 輝く星の下、跪いた1人の女性が 両手に杯を持ち、泉と大地に水を注いでいます。
水の一方は根源の泉へと戻り、再び流れを生み水で満たす。一方の水は大地に落ち、地中に眠るあらゆる種子を育む。
その用途において、杯は異なっていることが読み取れます。それは、この女性が人間でありながら、次元と次元を結ぶ 仲介者としての力を持っていることを示しています 」ラムカが言った。
「 現在のカード、この女性の役割は 私にとって、シャロンでのマリオンさんとラムカさんの事ですね 」ソフィアが言った。
 
私は前回、シャロンで このコラボセッションを決めた時に出したカードを思い出していた。

ⅩⅦ希望・・ おまえの光はここにある・・ 器が替わっても、永遠に・・ ルシフェルが言った
風の2・・ 二つの鬩ぎあう極の均衡、この相対世界の光と闇を、意志を持って統合して行く。Ⅱ女教皇・・ 物事の隠れた側面を現すイシスの神秘に導かれながら。


「 近い将来・・ 」ラムカは続けた。「 火の8・・ 8人の小人が松明を持ち寄り 1つの大きな炎に燃やしています。
活動性や素早さパワーを表します。
これまでの、決まったやり方で成果を求めるよりも、自由な発想の転換でパワーを発揮し、予想外の成果を得られるでしょう 」
「 それは・・ 何かサプライズが起こるという事ですか?」ソフィアが言った。
作品名:ゾディアック 5 作家名:sakura