小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

ゾディアック 3

INDEX|1ページ/7ページ|

次のページ
 
~ 17 ~


施術を終え、客の褐色の肌に着いたオイルを 熱いタオルでふき取った

「 お疲れ様でした。 こちらにタオルがございますので、どうぞお使いください 」
私は客に声をかけながら、うつ伏せになった顔を覗いてみた。
客は顔を上げずに、そのまま「ありがとう・・」と答えた。
顔は見えなかった。

「 まあいいか、どうせ後 受付で見れる 」私は思った。
ドアを閉めると 客がゴソゴソと起き上がる音がして「あー気持ちよかった・・」と聞こえた。

バックに戻り、腕に着いたオイルを洗い流しながら、鏡を覗くと 目の色は元の色に戻っていた。
あの強烈な前世のデジャブと、月光の翼を持ったルシフェルという名の女の姿が
生々しく脳裡に焼き付いて離れなかった。

不気味な美しさだった。口もとから血を流しながら笑っていた・・
あれは天使か?それとも悪魔だったのか?
「 闇では闇と共に・・ 」と言っていた・・
私は まだ頭がボーっとして何も考えられなくなった。

「 お疲れ様でした、どうぞお掛け下さい 」受付からコミュウの声がした
「 あの客が出て来た! 」受付に出ると、コミュウが客の前に立って飲み物を聞いていた。
「 ・・はい、少々お待ちください 」コミュウが後ろを向いて退くと、客の姿が見えた。
私はその場に凍りついて 動けなくなった

つば広の黒い帽子を被り、黒いワンピースを着た 黒ずくめの女がそこに座っていた。
「 まさか・・ 」今日三度目の黒い女に 私は恐怖心すら覚えた
呆然と立ち尽くす私に、コミュウが声をかけた
「 マリオンさん?どうしたんですか?・・お会計を 」

「 あ、ああ・・ 」私は我に返り、黒い女に近寄ると 目の前にひざまづいた。
「 で では、7700円になりますね・・ 」震える手を抑えながら言った。
女は黒いアイラインで囲まれた目を細くして 微笑みながら「 はい 」と財布から金を出した。
ドリンクを飲み干し、女は帰って行った。

私の異変に コミュウがまた聞いて来た
「 マリオンさん、どうしたんですか?何処か調子でも悪いんですか? 」
私は今日3回、同じ黒い女に会った事を話した・・ コミュウは驚いて
「 えー?気持ち悪いですねぇ!ストーカーですかね? 」と言ったが

コミュウに言われて初めて、私は気づいた
「 ストーカーじゃない、あれは・・ 別々の人間だが・・ 同じ容姿で現れた 人の姿をしたエネルギー体
クマラの媒体が顕在化した姿だった。私に知らせる為に・・? 」
思いながら同時に「何を?」頭が問いかける。
「 現れ始めた事を・・ 」「 何が? 」
「 状態が・・ 」「 何の? 」
「 状態の光・・ 」「 ・・・ 」私の頭は黙った。


ここは意識の闇の世界。外に閉じ込められた五感が・・
状態の次元が真実 頭は使ってるだけ・・
観音とは・・ 振動を音と認識する究極のリアリティ・・

女神島の 闇の戒壇で聞こえた声が蘇って来た。

相対の闇 状態の光
観音とは 感じる私達の内なる宇宙、状態次元の世界の事。
私達が本当に存在する場所、そこでは天使界と繋がっている
そこでは天使界と繋がっている・・

「 ルシフェルだ! ヤツは この意識の闇の世界、
人間のマインドに寄り添う天使なんだ! 」
私は叫んでいた。
「 だから 闇では闇と共に・・と言ってたんだ!! 」

私の異様さに皆怖がって、スタッフの子達は その場から逃げ去った、コミュウだけが側にいた。
コミュウが言った「 まるで 女神島の闇の戒壇にある三十三観音みたいですね 」

その時、コミュウの胸にある名札が 受付の照明に当たって光った
KOMYU KUWAIN と書かれてあった
彼女の名前は、コミュウ=クヴァイン
クヴァインという音の響きは観音を意味する

私の意識は 何にも知ら無かったのだ。
これまで起こって来た事も・・ 全て初めから深い意味があった。

ヤミデハ ヤミトトモニ・・
ダイジョウブ アナタハ イツモ マモラレテイル・・

鏡に映った、私の瞳が赤銅色から翠色に変わり・・ ニヤリと笑った。



~ 18 ~


リンガー・・ リンガー・・ リンガー・・
リンガー・・ リンガー・・ リンガー・・

お経のような声が聞こえる
これは、夢?
私は 目を開けた。

暗い砂漠が広がる・・
吹き荒ぶ砂嵐の中に ただ1人
私は 大きな石の椅子に腰かけていた。

手や足や・・頭や顔も・・身体中が全て 赤い砂に覆われていく
もうどれ位 ここに座っているのだろう
私は もう一度目を閉じた

リンガー・・ リンガー・・ リンガー・・
リンガー・・ リンガー・・ リンガー・・

砂塵の音?
ここでは 風の音しか聞こえない
再び眠りに堕ちかけた時
気配がして目を開けた

目の前に、天使がひざまずいていた
月光の翼を背負った 堕天使ルシフェルだった

「 人間だけが判っていない・・ 」
彼女は語り始めた

「 満たすを逆に取っている
器を満たすんじゃない
光として満ちている
状態として存在するだけ・・

外に見えるものは 幻
掴もうとしてはいけない
光が借りている器 」

ルシフェルのかしずく
私の足の下には 細い三日月が光って見えた。


「 マリオンさん 」
誰かの呼ぶ声で目が覚めた
「 カヨがまた大変なんです! 」ミオナだった。
私はうたた寝していたようだ。

行ってみると、カーテンの隅にうずくまっているカヨの姿があった。
「 どうした?カヨ 」私が声をかけると
消え入りそうな声で「 彼が別れたいって・・ 」と言った

前世からの繋がりが解り、2人は旨くいってたんじゃないのか?
私は何があったのかカヨに聞いた。

2人は暫く、お互いが子供の頃から 無意識に拘っていた事を話し合いながら
絆を辿るルーツを追い求めていた。
彼氏は 何故か 幼い頃から十字架が好きで、一番愛するカヨとの関係を築けない神経恐怖症を持っている事や
自分に女性のような受け身の繊細さがある事を・・

カヨは、子供の頃 聖十字ガールスカウトに入って奉仕活動をするのが好きだった事や、
心病む彼氏を愛して守ってあげたい衝動にかられる事や、何故かずっとケランスに行ってみたかった事を・・
ケランスは2人が信仰を元に愛し合った場所で、聖堂騎士だったカヨが 還ろうとしていた国だった。

2人は魂の絆を確かめ合いながら 前世の約束を果たそうとしていたはず。
それが何故突然に 壊れてしまったのか
「 彼は、怖いと言いました。マリオンさんが言った事は本当かもしれないが・・ それが大丈夫という安心に繋がらず
掘り下げて自分を知れば知るほど、怖くなると言いました! 」カヨは泣きじゃくった。

私がした事は、返って2人の関係を悪化させていた。
「 何故だ?根本的な原因が解れば、本来の2人に戻れるんじゃないのか? 」私は分からなくなった・・
カヨの肩を抱いて摩るしかなかった

すると カヨの後に 青い光がスパークして光った
ホログラムのような画像が浮かび上がって来た・・
まるで映写機の映像のようだ。
西洋の甲冑に身を固めた1人の騎士が 馬に乗ってポクポク夜道を歩いていた。
作品名:ゾディアック 3 作家名:sakura