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ゾディアック 2

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私の概念はまたグルグルと うるさくシッポを掴もうと もがき始めた。

「 そうなんだ、魂は覚えてて、別人に生まれ変わっても きっと何か心当たりがあるんだろうね 」私はカヨに言った。

ダイジョウブ アナタハ マモラレテイマス・・
ドンナ シュンカンモ

「 見えない自分を信じる事は、きっと今の自分で分かってる以上に もっと大切な事なんだ 」私は思った。




~ 16 ~


客が来たので施術に入った。ホットストーンセラピーだった。
遥か何千年も昔、ネイティブと呼ばれる人達から始まった
神と人間の間で執り行われるイニシエーションのセラピーだ。

神事として、王の神官が祈りと共に行う 厳かな祀り事であった。
かつて人間は、信仰心を持ち 常に見えない存在を崇めていた
自分たちも地球の一部として生かされている 自然界の精霊の一つである事を知っていた。

使われる石は 地中の奥深くに眠る 火山の溶岩が固まって出来た玄武岩だ。
高温に熱しても割れない強い硬度を持ち、何時間でも熱を逃さず冷めない
手に握ると どっしりとした温もりを伝え 地球のエネルギーをダイレクトに感じられた
かつて私達が宇宙と一つの存在であった事を思い出させた
私はホットストーンセラピーが一番好きだった。

今日のオイルは フランキンセンスだ
私に、遠い風の記憶を呼び起こさせる・・

アロマは不思議だ。覚えのない太古の 遺伝子に眠る匂いを呼び覚ます。
魂の記憶


トントン・・ ドアをノックをすると
「 どうぞ 」と声がして中に入った
熱せられた石の湯気が 煙のように部屋一杯に立ちこめていた
うつ伏せに横たわる客の裸体が見えた。

月明かりのようなランプの灯に浮き上がる 客の身体は
褐色に近い肌色だった
「 珍しい・・真冬に焼けた肌 」私は思った。

フランキンセンスのオイルを手に取り、褐色の滑らかな身体に塗りつけていく
突然 デジャブが起こった。眩しい閃光に一瞬目が眩み
次に目を開けると・・ 松明の大きな炎が見えた。
私は強く目をつむり、もう一度大きく開いて見た。
トランス状態に入り幻視が現れた・・

揺らめく炎の下には オイル漬けになった 小さな褐色の身体が
ツヤツヤと眩しく輝いて見えた。
頭と首筋、両手両足首にも 宝石の装飾が施された金の輪っかをしていた

壁は全て大きな切出し石が埋め込まれ 床は砂の混じった石床で覆われていた。
ベタベタの香草オイルで少女の身体を撫でる度、素足に紐を巻いたような
サンダル履きの私の足は 砂で滑り ジャリジャリと音を立てた

香草を燃やしている金色の皿からは、きつい香りと煙が立ちこめていた。
私は何か歌っているような旋律の 祈りを捧げながら彼女の背中を撫でていた

「 これは夢か・・ いや、私は今、サロンで施術をしている真っ最中だ! 」

カラスが12と鳴いてクマラを使い始めてから 夢の中だけでなく
現実の世界にも様々な事が起こり始めていた

UFOを観たり・・ 黒い男女が現れたり・・
それらは見るというよりも、見せられているという方が近かった
見るのと 見せられるのは違う・・

人は普段、見たいものしか見ていないのだ
概念は分からないを嫌う
頭がグルグルと不毛な追いかけっこを続ける内に
私の中で既成概念が綻び始め・・ 何かが自ずと現れ始め
意識は臨界を超えようとしていた


Let me go ・・
Let me go ・・

行かせて・・
行かせて・・


突然、強い風が吹き バサバサー!と鳥の羽ばたく音がした
大きな黒い影が私の前を横切った
恍惚に酔いしれていた私は 我に返って ギョッとした!
元のサロンの部屋に戻って 施術している私の足元には、裸の女が膝を立ててかしづいていた。

足元まで流れ落ちる 濡れた長い黒髪は、漆喰の闇のように黒く
身体は 妖艶な月明かりを纏って輝いていた。
女は明らかに人間では無いオーラを放っていた

彼女の輪郭は微細な光の粒子に包まれ 陽炎のように風に揺らめいていた
そのオーラは・・ 背中から天に向かって長く伸び、上の方は薄くなって消えた
まるで大きな輝く翼のように見えた・・ 月光の翼。

身動きも出来ず 唾を飲み込んで見守る私に
その女は ゆっくりと顔を上げながら、ニヤリと笑みを浮かべた
その口元からは・・ 赤い血がツーと流れた
輝く瞳は 吸い込まれそうな程美しく、赤銅色から深翠色に変容する炎で燃え盛っていた。


「闇では・・ 闇と共に・・」女は言った


「闇では、闇と共に?」言葉を繰り返した途端 女の姿は掻き消えた

白昼夢か・・ リアルすぎる。私は客の身体を石で流しながら 今朝から起こった事を考えていた。
黒い女は、黒い男の腹の辺りを 時計回りに撫でていた・・ 第2チャクラの辺りだ
コーラルのエネルギーが渦巻く場所、授容の愛

黒い男は 私の眉間に 何か玉のような物を投げ込んでいた
第5チャクラ・・ ロイヤルブルーのエネルギーが渦巻く・・ 意識が高次スピリットに繋がる場所

「 アイのテーマは自己存在に関する 人間の普遍的なテーマだ。でもそれが今・・何故? 」思った瞬間


掴もうとしてはいけない・・ と女神の声がした


「掴もうとしてはいけない?何を掴もうとしてはいけないの?」私は聞いたが
答えは返ってこなかった・・


アイツノ ナマエハ ダレダッケ・・?
アイツノ ナマエハ ダレダッケ・・?


電車で黄色いTシャツの男性が言った言葉が蘇って来た

「アイツの名前は・・ ルシフェル・・ 」私の口から声が出た

鏡を見ると、私の瞳は 赤銅色から深い翠色に変わっていた











作品名:ゾディアック 2 作家名:sakura