ゆい物語(気導士版)第一夜
第1夜 ゆい、怪異に遭遇す
〔 …………してください 〕
誰かの声が聞こえたような気がする。
「え……?」
夕焼けに頬を染めた美少女は、あたりを見回してみた。
ピンク色の可愛いワンピースが、ふわぁりと、エアーに踊る。
しかし、……声を発した人物は見つからない。
そこは、道路のど真ん中である。
近くには、小さな神社の入り口が存在している。
しかし、お祭りの時期でない今は、人通りがほとんどなかった。
『ゆい』は、突風、竜巻のごとく、グルグルッと体を回転させつつ、
周囲を確認してみたが、やはり誰もいな〜い。
短く切りそろえた黒髪が、不安気にゆれた。
しかし、一瞬にして不安はすぐに雲散霧消(うんさんむしょう)。
そのかわり、と言ってはなんだかねぇ……ムカムカしてきちゃったよ。
―― 空耳かよっ!! ――
そう思った彼女は、抱えた荷物を持ち直し、帰るべき自宅へと歩き出す。
その直後、――――――
〔 もしもーし!! 〕
突如、何者かの声が響く。
――紅く染まった町並みの中、
十七歳の可憐な乙女がただ一人、立ちつくす。
先程と同じく、話しかけた相手を視認することができなかった。
そして、さらには、…………
( これは…………変だっ!! )
とっさに、ゆいは、そう思った。
――そう、その声は彼女の心の中に……別の表現をするならば
『ゆいの脳内』に突然飛び込んできたのだった。
作品名:ゆい物語(気導士版)第一夜 作家名:気導士