Ramaneyya Vagga
晩冬に春を観ず
自分と他人という観念ばかり見ることから心の目を離した人だけが、辺りの自然が過ぎ去っていくことにふと気づき、心を驚かせるものだ。
明るい日差しは植物たちを目覚めさせるのにもう充分だ。風はいくらか花の香りを乗せている。庭の沈丁花を見れば、たくさんの蕾を開きたそうにもじもじしているようで愛らしい。春の雲は、今ごろ南洋を旅立っただろうか。
そのとき、あの人の声が聞こえたような気がして、春の安らかな暖かさそのままのあの人、あの優しい人恋しさに、私は恍惚となったことであった。
作品名:Ramaneyya Vagga 作家名:RamaneyyaAsu