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かざぐるま
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欲望の方舟 ~選ばれしモノたち~

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『エターナル 本部』 一月十八日


「博士! 無線を傍受しました。生存者と思われます」
「なに? ボリュームを上げてくれ」
 この日、颯太は発信者不明の無線を傍受した。
「こちらは大阪にある政府用地下シェルターです。応答して下さい。換気設備の不良により、放射線障害と思われる病気で大勢が苦しんでいます。こちらには四十名の生存者がいます。繰り返します……」
 内容から察すると、政府施設からの発信だと思われた。ゆっくりした口調で同じことを繰り返している。
「颯太くん、位置は特定できるかね?」
 博士は何故か複雑な顔をして颯太に尋ねた。
「堺の近辺だと思われます。しかし博士、救出って可能なんですか?」
「いや、難しいじゃろ。ボビー君を亡くしてから、太田君も慎重になっとる。L・D・Fをまた解除することは可能じゃが、今度も天候が我々に味方するとは限らん」
「僕、太田さんに聞いて来ます。生きてる人がまだいるなら、助けたいじゃないですか!」そう言うと、太田を探しに部屋を飛び出して行った。
 しばらくすると、颯太が太田を連れて部屋に入ってきた。
「博士、無線が入ったんですって?」
「太田君、分かっているとは思うが、助けに行こうなんて言うなよ。前回はエターナルの将来の為に危険を犯したんじゃぞ」
 博士はキッパリとした口調で言ってから、太田をギョロリと見た。
「しかし、同じ民族が助けを求めているんですよ。太田さんなら助けに行きますよね?」颯太は期待を込めて太田に同意を求めた。
「……颯太、残念だが今回は事情が違う。その四十名の為にエターナルの国民を危険にさらす訳にはいかないんだ」
 颯太に言い聞かすように答える。しかし太田は歯を食いしばっていた。
「じゃあその四十名の中に例えばアイリーンさんがいたとしても、太田さんは行かないんですか?」
 颯太は少し怒りを含んだ口調で問い詰めた。
「分かってくれ、颯太。俺はこの国を守らないとならない。例えそこにアイリーンが居たとしてもだ」
 悲しそうに、しかしきっぱりとそう言うと、つかつかと部屋を出て行った。
「颯太、おまえも本当は分かっているんじゃろ? 心苦しいかもしれないが、何を守るのが一番大事か決めないとならん。わしだって出来たら助けに行きたいんじゃよ」
「分かりました。博士、すみませんでした」
 颯太はこぶしを握り締め、しぼりだすような声を出した。
 そして乱暴な手つきで、無線のスイッチをぱちんとOFFにした。