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かざぐるま
かざぐるま
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欲望の方舟 ~選ばれしモノたち~

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『日本国・東京』 


 十二時一分頃、核弾頭と思われる爆弾が東京湾上空で炸裂した。爆風が去ると共に、近くのコンビナート群は待ってましたとばかりに炎上し、その火災は東京都だけではなく、千葉、神奈川方面にも高速で拡大していく。
 首都高速では車の中で焼かれた人たちが、苦し紛れに車外に出たまま息絶えている。横浜でもショッピングモールの道端で、皮膚が焼けただれた少年が水を求めて喘いでいた。
 爆心地の近くにいた人は、爆圧を受けただけで即死だったので、ある意味苦しまなくて済んだのかもしれない。直撃をしのいだ神奈川方面の人々は、箱根を越えようと静岡方面に続々と移動を始めていた。
 高温の火災旋風も各地で起こり始め、火災はどんどん広がり大田区、品川区と北上を続ける。その勢いは止まらず、今や新宿区まで達しようとしていた。先を争う様にして都内の人々は、北へ、北へと徒歩で脱出を始めていた。
 地下鉄に逃げ込んだ群衆は、幸運にも超高速の熱線の直撃をかろうじて躱すことができた。しかしその後襲ってきた1000℃を超える火災の高熱によって、入口付近の人々は一瞬で炎に包まれてしまった。運よく地下に入れた人々も、だんだん熱くなってくる構内に焦燥を感じ、さらに奥へと無理やりに入って行った。だがしばらくすると有毒物質を含んだ煙が入口から侵入し始め、呼吸ができなくなっていく。煙が充満するのが先か、火災が鎮火するのが先かで運命は大分違ってくるだろう。
 やがて東京上空は黒い煙に覆われ、空は昼間なのに夜のように真っ暗になった。数時間後には関東上空を黒い雲が覆いだす。
 そして、突然雨が降り出した。放射性物質を含んだ『黒い雨』だ。生き残った人々は逃げる途中で、この雨を容赦なく浴びてしまうだろう。
 まさに、ヒロシマ・ナガサキの悲劇がまた始まろうとしていた。
 着弾とほぼ同時にアメリカから発射された長距離ミサイルは、北朝鮮上空で炸裂し、文字通り『報復』を行った。どのような力関係が働いたのか定かではないが、すでにロシア、中国が同時にICBMをワシントン、グアムなどに発射していた。
 地球各地で起こるこの爆発を見ていたのは、宇宙空間にぽっかりと浮かぶ人工衛星たちだった。
 悲劇のシナリオ通りならば、大火災で発生した煙によってまず太陽光線が遮られ、次に死の灰が世界中に拡散して地上の気温が急激に下がりだす。食物連鎖も途絶え、地球の生物はやがて死に絶えてしまう。そして地球は灰色の星になっていく。
 感情を持たない人工衛星たちは、自分の体が壊れるまでカメラを通して見ていくのだ。
 送信する相手もいないまま。