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かざぐるま
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欲望の方舟 ~選ばれしモノたち~

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『エターナル・作戦本部』 クリスマス 同時刻


 颯太はレーダーを凝視していた。今のところ飛来する物体は映っていない。太田は原子力発電所に警備の最終チェックに向かっているところだ。
 果たしてあと三時間後にハルマゲドンは起こるのか。颯太はまるで実感が湧かなかった。細く長い指を滑らせ、島の周りのL・D・Fのチェック画面を出してみた。
 実際の島の外郭に設置されたL・D・Fの発射装置は、プロパンガスのような形状をしている。四百五十の発射装置のコンディションは、最高の状態で全て颯太の端末のモニターに表示された。
 この発射装置からレーザーが上空の一点に射出され、最終的にはドーム状の力場を作る。例えると、卵の殻を半分に割ったものをかぶせる感じだ。
「すべて異常なしと」
 颯太はつぶやくと、博士の方に目をやる。那智博士は巨大スクリーンに映し出されたエターナルの全体図を見ながら、何かを計算していた。
「颯太くん。北朝鮮のミサイルは本当に沖縄まで届くと思うかね?」
 博士は淹れたての珈琲を飲みながら、颯太に振り向いた。相変わらずこの人には疲れた様子が全く見えない。
「そうですね。過去の例から言うと、弾頭の種類はともかく途中で落下する可能性も否定できないでしょう。しかし、最近のミサイル技術の情報を分析してみると、どうもどこかの国から高度な技術提供があった可能性が高いですね」
「最新型のミサイルの可能性があるということじゃな。その場合考えられる弾頭は通常爆薬・核・生物・化学兵器の四種類じゃ。L・D・Fは基本的に全てに耐えられる計算だが、もし大型のL・D・Fが機能しなくなった場合は……」
 謎かけをする顔で颯太の答えを待つ。
「小型だけで果たして守りきれるかってことですね。全ての建物に設置されている訳じゃないですから」
「そうじゃ。防護スーツも未確認の化学兵器の浸食があれば、どこまで耐えられるかわからん」
 眉間にしわを寄せ、少しだけ計算の手を止めた。
 L・D・Fが設置されてない日本の都市など、どちらにしても壊滅的なダメージを受けるに違いない。
 ちょうどこの時、静かにドアが開いて太田が帰ってきた。
「太田さん、お帰りなさい。あちらはどうでした?」
「大丈夫だよ。電力供給には不安は無い。警備面でもアイリーンが中心となって指揮しているから大丈夫だ」
 顔に不安な影は微塵もなく、そしてそれがスタッフの力の源になっていた。
「……では、あとは待つだけじゃな」
 博士は手を組みコンソールに肘をついた。
【ハルマゲドンまで、残り二時間】