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かざぐるま
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欲望の方舟 ~選ばれしモノたち~

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 プロローグ


 一部の古文書が示すように、人類は一度滅びたことがあるのだろか。無いとしたら、それはいつやってくるのだろうか。



『アフリカ大陸・サハラ砂漠』 


(この光はなんだ?)
 アブダル・マリクは、砂丘ごしに遠くの空を見上げた。
 さっきまで吹き荒れていた砂嵐のせいで、白いガラベーヤ(頭から被る、裾長のワンピース)の袖から砂が入り、汗ばんだ身体にべったりと張り付いている。妻の言うとおり、もっと朝早く出るべきだったと後悔しながら、革の水筒を傾けて水を一口含んだ時だった。
 マリクのすぐ傍らには、砂嵐の間ずっと鼻の穴を閉じていた〈アラビアンキャメル〉のアミニアが座っている。
 その光はすぐに眼も開けられない程に強くなり、思わず手で顔を覆う。だが、信じられない事に、目を覆った自分の手の骨が透けて見えている。彼のすぐ先には、砂嵐とは違うもっと猛烈な何かが、巨大な砂の壁を練り上げながら迫って来ていた。
 たまらずアミニアの影に隠れようとしたが、実際は一歩も動いていなかった。いや、動く時間さえ『それ』は与えてくれなかった。
 ごうっ! 
 そのまま高熱と放射性物質を兼ね揃えた爆圧に吹き飛ばされ、彼の存在は消えていく。
 そう――文字通り消えて行った。彼が最後に聞いたのは「ジュン!」という音だった。これは一瞬のうちに細胞が死ぬ時に上げる、最後の叫びだったのかもしれない。

 マリクとアミニアのいた跡には、まるでダンスをするように砂粒だけがきらきらと踊っていた。