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七ケ島 鏡一
七ケ島 鏡一
novelistID. 44756
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グランボルカ戦記 7

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「ヒント。昔々ある国では、妻は夫より遅く寝て早く起きるっていう習慣があったんだよ。つまりそういうことだよ。」
 レオの上に覆いかぶさるようにして四つん這いになりながら、悪びれる様子もなく言ってのけるソフィアの言葉を聞いてレオの顔が引きつる。
「・・・アンサー。お前のやっていることは夜這いだ。」
「愛があれば!」
「許されねえよ。」
 そう言ってソフィアの額にチョップをお見舞いすると、レオはベッドの上の毛布に身を包んで身体を横向けて目を閉じた。
「俺は寝るけど、妙なことすんなよ。」
「それはあれだね?するなするなって言っておいて、実は期待してるっていう。」
「違うわボケ。本当に眠いんだから、邪魔すんな!・・・まあ、隣で眠るくらいなら別にいいけどよ。」
「そう?じゃあお言葉に甘えて。」
 ソフィアはそう言ってレオの背中側に横たわると、毛布の上からレオを抱きしめた。
「暑い。」
「嫌じゃないくせに。」
「・・・・・・なあ、ソフィア。」
「ん?」
「ジゼルのこと皆に話したのか?」
「うん。ジゼルちゃんは元々知っていたらしいけど、エド達は驚いてた。」
「そりゃあそうだろうな。・・・アレクとユリウスも驚いてたよ。二人共それならリュリュを身代わりに立てるのをやめたいみたいだったけど、状況を考えるとそうもできないって事でかなり苦しんでいる。」
「・・・そう。リュリュちゃんはね、今のままでいいって言ってたよ。守られているだけの自分が、世界を守る事ができるなら。ってさ。・・・強い子だよね。」
「俺達がリュリュくらいの頃は遊び呆けてたっていうのに。本当に可愛げのない子供だよな。」
「早く平和な国を作って、リュリュちゃんが子供らしいワガママや可愛げを出せるようにしてあげたいね。」
「なんで自分はわかってます。みたいな口調でそういうこと言うんだよ。」
「だってレオ君の言いたかったのってこれでしょ。」
「そうだけど。」
「・・・わたし達はジゼルちゃんやリュリュちゃん、それにエドみたいに世界をどうにかするような運命にはないけどさ、自分の未来を切り開くことくらいはできるじゃない?きっとね、きっと皆がそうやって自分の未来を切り開いていけたら・・いい・・未来が・・・。」
 ソフィアは、その台詞を最後まで言うこと無く、寝息を立て始める。
 ソフィアが寝たのを確認したレオは、緩んだ腕の中から逃れて、毛布をソフィアにかけ直してやった。
「・・・ったく。どうせリュリュの部屋で一晩中考えこんでいたんだろ。俺にはお見通しだっての。でもまあ、辛い話をちゃんとして来たご褒美だ。今日は一緒に寝てやるよ。」
 そう言ってソフィアの頭をなでて頬にキスをすると、レオもソフィアの隣で目を閉じた。



夜更かしをしたせいで正午を大分回った所で起きだしたリュリュが、大急ぎで身支度を整えて執務室に向かうために部屋を出ると、廊下にはユリウスが立っていた。
「なんじゃユリウス。何か用か?」
「話がある。ついてこい。」
 ユリウスは一言だけそう言うと、リュリュを待たずに廊下を歩き出した。
「あ、待てユリウス。リュリュは今日の分の仕事が・・・。」
「それは君の兄さんと姉さんがやってくれているよ。君は今日一日完全に休みだ。もちろん、皇子と姉さんが不在の間ずっと書類仕事をやっていた僕もね。」
 実際には二人共アリスがいなくなってからはまともに仕事できていなかったのだが、それを言っても詮無きことなので、リュリュはそのことは言わずに置いた。
「もしや・・・姉様のこと、聞いたのか。」
「ああ。レオからね。とりあえず今日は久々の休暇だし、ゆっくりしよう。」
「ふふん、良いのか?アリスが居ないからといって他の女に手を出すなどと・・・」
「僕の目の前に居るのは女児であって、女性じゃないだろ。」
 バカにしているとか、そういうことではなく本当に何を言っているのか理解できないという風にキョトンとした顔をしているユリウスを見て、リュリュの心にフツフツと怒りが沸き起こる。
「ユリウス。」
「なんだい?」
「リュリュは立派なレディじゃ!」
 そう言って思い切りユリウスのすねを蹴ると、リュリュは肩を怒らせながら廊下を歩き出した。
すねを蹴られて反省したのか、その後のユリウスはリュリュを一人のレディとしてエスコートし、楽しませた。
(やればできるではないか・・・)
 そう思うと同時にリュリュの中には(これも、アリス仕込みなのかのう。)という考えも浮かび、チクリと胸が傷んだ。
 楽しむと言っても、リュリュとユリウスの二人きりというわけではなく、護衛の兵士を何人か連れての散歩や買い物位で、少々息苦しくはあったが、ここのところ休みらしい休みを取っていなかったリュリュにとっては非常にいい気分転換になった。

 アミサガンのメインストリートを歩いて、めぼしいものを買い込んだ二人が城に戻ったのは陽が大分傾いた夕方だった。
 まだ仕事にかかりきりだというアレクシス達とは別に夕食を取ると、二人は中庭にあるお気に入りの木の下へと移動した。
「のう、ユリウス。」
「ん?」
「前にマントを貰った礼をしておらんかったじゃろう。」
「いや、あれはお詫びで、別に礼をしてもらうようなものじゃないから。」
「最初お主の態度が悪かったというのであればリュリュも同様じゃ。まあ、リュリュの場合、元々がこんなしゃべり方じゃから今も変わらぬが。」
 だが、それは幼いながらに領地を収めなければならなかったリュリュの苦肉の策であることを今のユリウスは知っている。
「いや。君はその態度に見合うだけの仕事をしているよ。今日この街を見て改めてそう思った。」
「いいから!・・・いいから、黙ってこれを受け取れ。」
「そう言って、リュリュはユリウスに小さな小箱を渡した。」
「開けてもいいかい?」
「うむ。」
 それは、まだユリウスとアリスが付き合いだす前にリュリュがアリスと一緒に選んだ、ちいさな魔法石がはめ込まれたペンダントだった。
「これは?」
「リュリュからの詫びの品じゃ。魔法石にはリュリュの魔法がはいっておる。もし、万が一お主に何かあった時、きっと力になってくれるはずじゃ。」
「そうか。・・・ありがとうリュリュ。」
 ユリウスはそう言ってペンダントを箱から取り出すと早速自分の首にかけた。
「うむ。さすがはアリスの見立てじゃ。よく・・・似合うのう。」
「アリスの見立て・・・そうか。」
「何をしょぼくれた顔をしておるのじゃ。アリスは戻ってくるのじゃから、そんな情けない顔をするではないわ。そんなことではアリスが戻ってきた時に笑われるぞ。」
「そうだな。彼女が戻ってくるまでに少しでも一人前にならないとな。このペンダント、大事にするよ。僕はアリスや君が居なくても一人前になってみせる。」
「ちょっと待てユリウス。アリスやリュリュが居なくてもというのは、一体どういうことじゃ。リュリュはアリスと違ってどこにも行かんぞ。ずっと本陣で貴様と一緒におる。」