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dutrucave of ×××× -Ⅱ

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一つは黒いのがいる方向へ、一つはその場で狼狽えたように立ち止まる。
それの正体を察した直後、アヴァルタは飛び出した。
「明かりをつけるな!」


 ▼   △   ▼
いきなり聞こえたその声は、切迫した空気をはらんでいて、だからキリクは詠唱を中断した。
視界に見える範囲に出てきたそれは、キリクの前まで来るとがくりと膝をつく。
だがそれは、敬いなどの意味では全くないことは誰の目にも明らかだった。
「───アヴァルタ?!どうしたんだよ?!」
傷だらけである。
「襲われた!お前の相方が突っ込んでいったのがそれだ」
「は………襲われた!?誰にだよ!!」
「今はいい!それより早くこっち来てくれ!」
声の続く方に走る。闇に慣れてきた目は、立ち止まったアヴァルタの足元に横たわる影をとらえた。
「リアンだよ。吹っ飛ばされたんだ。俺じゃ対処しきれない」
傷だらけ。アヴァルタよりも酷い。
ところどころに手当てをしたのが見て取れたが、どう見ても足りていない。
「リアン………?!そうか、お前とペアに………」
言いながら、魔法を発動。"時間戻し(タイム・ループ)"により、急速に傷が癒えていく。
あらかた治したところで魔法を止める。全て魔法で治してしまうと自己治癒能力が失われる恐れがあるからだ。
「ひとまずは大丈夫だと思う。しかし………何があったんだ?」
一息ついて、最初の疑問に。
アヴァルタは、止血の終わった頭を軽く叩きながら答える。
「"影"だよ。恐らくは、だがな」
「"影"………?」
"影"とは、魔法士や兵士など、戦に関わる者であれば一度は聞いたことのあるモノの名だ。
戦等で死んだ人の遺念が、影のように黒いモノとなってさ迷う───だが、こんな風に戦闘はあっても死人はないこの学校で、それも人を傷つけるということがあるのだろうか。
弊害はあっても、実害はないはずなのだ。本来ならば。
「あれが本当に"影"なら、どうしてここに現れたのか、どうして攻撃してきたのか、全く分からないんだ。そもそも、あれが"影"なのかすらはっきりしてない」
「いや………あれは"影"………だよ。………まず間違いなく」
背後、抑揚に欠けた声。振り返ると、やはりレイヴィだった。
「………他にあんな姿してる生き物なんて………見たこと………ないし」
「お前………怪我したのか!?」
暗い室内にしてなおはっきりと見えるのは血液だ。既に出血はないようだが、腹に何かが刺さったような痕も見て取れる。
「ぼくは………ほっといても治る………よ。お菓子………取ってくる」
いつもとあまり変わらない調子で歩き出す。
「治るのは分かってるんだが見てて気持ち悪いからやめてほしいな」
「………あ。あと………"影"は………倒したから、明かり…………つけていい」
軽く振り向いて付け足し。のろのろとしているが、今度こそ食堂から出て行く。
その間にも急速に傷が癒えていくのが見えた。
相変わらず凄まじいなと感心。たしか"武人(グブラス)"の末裔だったはずだ、あれは。
やがてリアンが目を覚まし、痛みに顔をしかめて座り込んだ。
大丈夫だと言われたので明かりを点ける。アヴァルタ達の懐中電灯は戦闘中に壊してしまったらしい。
ぼんやりとしていると、レイヴィが戻ってきた。後ろにモカとユイ、少し遅れてライナーが憔悴しきった顔でついてきている。
「やっほー。会ったからついて来ちゃった」
モカが手を挙げ、ユイは軽く頭を下げる。
ライナーはというと、長椅子に倒れ込み、涙目になって抗議の声を出した。
「お前らほんっと………俺をどうしたいんだよ泣きたい………」
「ライナーさんが悪いんです。起きてるんならさっさと起きてください」
ユイが即答。
どうやら二人が離脱した後何かあったらしい。
空気が悪くなりかけるが、モカが取り繕うように手を挙げる。
「それよりさ、レイヴィが血塗れだったから何となく察しはついてたけど………なにがあったの?」
「………何も説明しなかったのか?」
一斉にレイヴィへ視線が向く。当人はというと、以前と変わらず手持ちのお菓子類をもりもり食べていた。
返答はない。
キリクは大きなため息をついた。
「お前はもう少し人の話をだなあ」
表情は変わらず。
もう一度ため息をついて、アヴァルタと話をまとめながらことの顛末を語り始めた。
作品名:dutrucave of ×××× -Ⅱ 作家名:湊穂