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瀬間野信平
瀬間野信平
novelistID. 45975
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火付け役は誰だ!(最終回)

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一旦リビングまで、騒ぐ二人を瑞が押し出し、俺は四人分の茶汲み坊主の役割を全うする。
曲がりなりにもこの部屋を借りているのは俺なのだが力関係に圧倒的差があるのは否めない。
女子3に男子1、この状況で男子が働かされないことがあるだろうか、いやない。

「あ、私オレンジジュースね彦!!」
「紅茶、茶菓子も頂戴。」
「…烏龍茶の気分。」

全員がそれぞれの意見をお述べだが面倒なので無視して麦茶を注ぐ。
そもそも学生の家で茶菓子なんか出すか富裕層め。

「え…それってまさか午後のお茶の時間は…」
「あるかそんなの!!」
「地獄!オニ!!修羅!!!ロリコン!!!」
「何とでも言ってもらって結構だが最後のは撤回しようか、お前に言われるのは大変に不本意だ。」
「これからこんな所で私は日々を過ごすことに!?」
「何を言おうと茶菓子を出す余裕など無いわ!!そこのゴキュゴキュ音を立てながら麦茶がぶ飲みしてる妖精がいる限りはな!!生活資金も呑まれてるから一緒に!!!そう、例えばお前がここで暮ら………ん?」

なにかが引っ掛かったよ?
何がかな?

「おい覆水、お前さっき何て言った。」
「『まさか午後のお茶の時間は…』」
「もうちょい先。」
「『地獄!オニ!修羅!ケチ!ロリコン!放火魔!』」
「さらっとレパートリー増やすな、その次だ、その次。」
「『これからこんな所で私は日々を過ごすことに!?』」

ここだ。
何で今覆水が押し掛け女房のような展開で押し掛けてくるのだ?
いや、まずそもそも、女房ではないが。

「ん?何でこの消火器は我が家に泊まり込み発言をしてるの彦?」
「俺に聞くな。一切分からん。」

この俺の発言を聞いた覆水のこめかみに青筋が出現。
地雷を踏み抜いた気がする。

「ほう、ほうほう、ほうほうほう。するとあれかな?君はこのか弱き乙女たる覆水媛佳を家なき子としてこの情けがない都市社会に放り出す気かね?ん?んん?」
「…要は家を壊した責任ぐらいとれい!!!…と、いうことね。」

腰に手をあてこちらを睨む覆水に要約する瑞。
いや、率直に言うと色々やる気だったのはそっちのほうだったし、結果的に家が爆発したのもこの二人を傷つけない為の結果なのだが親切は分かってもらえないようだ。

「うん、彦、家の爆破を親切とは普通言わないんだよ。」
「そのセリフ、そっくりそのまま倍返し。」
「………それはともかくとして、バトルロワイヤルに巻き込まれたからには家くらい吹き飛ぶのはそっちの水の妖精も分かってたはず!家が無くなったのは完全に責任も負えないし第一この部屋は四人が住むには狭すぎるんだよ!!」
「大丈夫、私簡易ベット持ってきたから。」
「いや、ベットの問題では無くてだな。」

いや確かに現状高校生男子のベットに妖精を自称する少女が潜り込むという現象は倫理的社会的に問題しかない為にベットがあって嬉しくないことは無いの…

「そしてそこのチャッカマンが簡易ベットで寝れば万事解決!!」
「チャッカマンには突っ込まないがその結論に至るまでに何が起こったか40字以内で要約しやがれ覆水!!」
「…確かに解決。」
「むしろ彦は男だからベランダでも死なないって!」

もはやベット以前にペット以下の扱いをされる家主。
このマンションはペットを飼うことが推奨されない上にベランダで家主が生活てそれこそどんな修羅だ。

「ベットはこれで良いね。」
「待てどこが」
「意義なし!」
「…賛成多数。」

民主制反対。

「残る懸案事項は?」
「はいはーい!!ただでさえ厳しくご飯を食べさせてくれない彦の家に更に二人も来てしまったら私のご飯が無くなると思います!!ご飯を下さい!」

穂子待って待ってその言い方まるで俺が虐待しているかのような言い回しになっているのはわざとかはたまた天然か。
はいはーい!!ご飯が無いのは穂子が全部食い尽くすからであって俺がケチだからではないと思いまーす!!
だがしかし我が家においてはこれ以上の資金的余裕が無いのも事実、穂子の懸念も頷けるのだがその点如何に。


「その点も大丈夫、十分な生活費は確保してきたから、ざっと、………ぐらいは。」


………はい?
わんもあぷりーず?


「だから……万円位は。」
完璧に思考停止。


なんじゃそりゃ。


「彦彦、どれくらいなの?そのお金って?」
「軽く車が買える、ご飯に例えれば毎月毎週毎食回らないお寿司が食べられる。」

それを聞いた瞬間卒倒する穂子、時価ですよ時価。

「まずどこの出身なんだか疑いたくなる金額だぞそんな金額。お前はいったい何者だよ覆水。」
「いや、そこまでお金持ちじゃないから大丈夫。持ってるものマンション位だから。」
「マンション?」
「そう、マンション。だからこそあれだけ派手になっても表沙汰になってないんだから感謝すること!」
「まさかあのお前が住んでた学生寮のマンション、お前の家の物なのか!?」

さらりと頷かれるお嬢様覆水。
確かにそれなら火災報知器を覆水が戦闘前に鳴らし、避難経路は裏口からとは言えあまりに人が居なかった理由もできる。
おおかたマネーパワーに任せてマンションの増築工事みたいな適当な理由と共にその時間マンションに人が居ないように仕向けたのだろう、火災報知器は人がまだ居たときに保険をかけてと攻撃する瑞の水の確保からか。

「…まぁそこまでしても負けたけど。」
「うるさい瑞!!大体そっちが最後に変なことしなければ絶対勝ってたのに!!」
「…ん?覆水、まさかお前最後に何で火が付いたのか分かってないのか?」

ぐぬっと変な声を出して黙り込む覆水。
隣にいる瑞に目線を向けてみたが黙って目を逸らされた、どうやら二人とも分かっていないらしい。
まぁ確かに傍目から見れば覆水は目に見える全ての燃えるピーナッツ達(税込105円)を壁面に薄く水を張るということで消火したように見えたはずだ。

「理屈は簡単だ、小学生だって分かる。火を付けるには火が付いた物を投げつければ良いだろう。」
「…でもあの時燃えるものは何も…」

そう言いかけた瑞が何かに気づいたように言葉を止める。
そうだ、燃えるものはなくていい、投げられるものに火が付いていれば良いのだから。


「チャッカマンごと投げつければ万事解決、分かったかね?」


無論無理やりではあった、水の層が厚ければチャッカマンの火は消えていた上に、それ以前に俺のチャッカマンが火を付けた状態でロックできる仕様でなければ出来ない作戦だった。

「そんな…無茶苦茶でしょ…」
「あ、付け加えておくけどそれまでの攻撃は俺が立案したけどこの作戦最初に考えついたのは俺じゃないぞ?」

「……まさか。」
「そのまさか。」


広がり密度が薄くなったモノを『強引に』一点から突破するやり方は誰かさんお得意のやり方だ。
…最初に自身の回りにある洗濯物をどかさずにとりあえず頭だけを出した頃から、そうだったのかもしれない、無論もしかしたらだが。

そんなずっと影で自己流を貫き、覆水達二人に勝った誰かさんは今流石に眠気が回ってきたのかうとうとしながら俺の後ろでゴロゴロしていた。
何を分かりきった事を、とでも言いたげに。