口は幸いのもと〈第5話 異能の敵〉
「……で、その、豆乳うにプリンが、超美味しいの! 激ウマ!」
ゆーこは、今日も、元気全開。ゆーたと、まーこの間を歩きながら、両サイドに向かって、しゃべり倒す。主に話すのはゆーこなのだから、この配置で正解なのだろうが、見方によっては、ゆーこが、他の2人の間に割って入っているように見えなくもない。
そのとき、
「空間転移」
という、大きな声が聞こえたかと思うと、ゆーこの姿がぐにゃりと歪み、悪夢のように掻き消えた。
「ゆーこ!」
ゆーたと、まーこが同時に叫んだ。
その次の瞬間、また、
「空間転移」
という、大きな声が聞こえたかと思うと、ゆーたと、まーこの視界はぐにゃりと歪み、軽いめまいを覚えた。
ゆーたと、まーこは、気が付くと、さっきまで3人で歩いていた街中とは、まったく違う場所にいた。
そこは、デパートのおもちゃ売り場のようであった。
2人が、やっと、そこまで理解した瞬間、例の大きな声で、
「裂天掌(れってんしょう)」
と聞こえた。何かを感じ取ったゆーたが、まーこの腕をつかんで、横っ飛びすると、さっきまで2人がいた空間の後ろの商品陳列棚が吹っ飛んだ。
「ちっ、外したか。勘のいい奴だ」
忌々しげな声が聞こえた。
「さっきから、何者だ? お前? 卑怯だぞ。姿を現せ」
ゆーたが、裂天掌とやら言う技が飛んできたと思われる方向に向かって叫んだ。
すると、
「空間転移」
という声とともに、ゆーたと、まーこの前方の空間がぐにゃりと歪み、それが直ると、1人の黒マントを羽織った男が立っていた。
「相手に姿を見せずに戦えるのは、資質の一つなのだが、『卑怯』とはな。いいだろう。姿を見せたところで、私の勝利は揺るがない」
黒マントは右脚を大きく後ろに引き絞ると、
「滅地脚(めっちきゃく)」
と叫んで、一気に解き放った。その蹴りは、デパートの床のコンクリートをビキビキと割りながら、ゆーたと、まーこに迫った。
今度は、まーこが、ゆーたを間一髪で物陰に引き込んだ。
「くそっ、何とかして反撃しないと」
ゆーたは、唇を噛んだ。
「そうね。反撃しましょう」
まーこは、そう言うと、ゆーたの左腕に、勝手に持ってきた売り物のデュエル・ディスケットを装着し、
「はい、これ」
と、1枚の蛮我王カードを手渡した。
すると、ゆーたは、すっくと立ち上がり、カードをデュエル・ディスケットに装填して、
「俺のターン。ヴィントホーゼ(竜巻)・リントヴルム(飛龍)を攻撃表示で特殊召喚。黒マントにダイレクト・アタック」
と、ビシッと決めポーズをとったが、
「って、出るわけないだろ! そんな物!」
と言った。
「ありがとう。こんな時でも、ノリツッコみを忘れないあなたが好きよ。これで、戦える」
まーこが言った瞬間、2人の間を一陣の風が吹き抜けた。ゆーたと、まーこの前に小さなつむじ風が起きたかと思うと、それは見る間に大きくなっていった。かくして、ヴィントホーゼ・リントヴルムは2人を背にして、雄々しく立ちはだかったのだった。
「でも、どうやって、操るの?」
尋ねるゆーたに、まーこは、
「私が操るわ。この操者の笛で」
と言って、何やら取り出した。
「って、それ、ただの防災用の呼子笛じゃんか」
ゆーたが、ツッコむと、
「ありがとう。これで、この笛も、ただの笛ではなくなった」
まーこは、笛を吹き、
「アーテム(息)」
と言った。
すると、ヴィントホーゼ・リントヴルムの口から竜巻が吐き出され。それは、見る見るうちに大きくなって、黒マントに迫った。
「空間転移」
すると、黒マントは、空間転移して、逃げてしまった。
「くそっ」
ゆーたは、悔しそうだったが、まーこは、落ち着いて、
「大丈夫、近くにいるはずよ」
というと、笛を吹いて、
「アルム(腕)」
と言った。
すると、ヴィントホーゼ・リントヴルムの口から、細く長い竜巻が生えた。ヴィントホーゼ・リントヴルムは、それを鞭のようにしならせて、辺り一面を手当たり次第に破壊し始めた。
「月光拳(げっこうけん)」
何かが、飛んでくる。とっさに、アルムでガードすると、相殺、攻撃も消えたが、アルムも消し飛んだ。
「あいつの攻撃を、なんとかできないかしら」
「まーこの言霊は例によって、力不足なのか?」
「『黒マントは攻撃できない』は無理でしょうね」
「うーん。……あ、そうだ。『黒マントは、小さい”つ”が言えない』ってどうだ?」
「え?」
「ほら、あいつの技、『裂天掌』、『滅地脚』、『月光拳』の3つとも小さい”つ”が入っていないかい?」
「あっ、そういえば」
「だから、小さい”つ”を封じるんだ。話し言葉は、ローマ字入力じゃなくて、かな入力だからね」
「あっ、バカ」
「えっ? あ!」
そう、この瞬間から、ゆーたの言ったことと反対のことが現実となる能力によって、話し言葉はローマ字入力になってしまった。
「仕方ないわ。ローマ字入力で、小さい”つ”を封じましょう」
まーこは、笛を吹いて、ヴィントホーゼ・リントヴルムを少し脇によけると、高らかに宣言した。
「黒マントは、同じアルファベットが2文字以上続く発言ができない」
「なんだそりゃ? アホが。行くぜ。れ……あれ? 言えない」
黒マントは、口や喉をさすっている。
「そうか。同じ文字が続けられないから、r・e・t・t・e・n・s・h・o・uと言えないのか、こりゃあ、大ピンチだ」
しかし、黒マントは、ニタニタ笑っている。
「裂天掌」
技の衝撃が、ゆーたと、まーこを襲う。ヴィントホーゼ・リントヴルムが護ってくれなければ危なかった。
「驚いたか、ガキども。チッコイ”つ”なんざ、単独で入れられるんだよ。ltuもしくはxtuでな。俺は、今、reltutenshouと言ったのさ」
黒マントは勝ち誇った。
「滅地脚……月光拳……裂天掌……滅地脚」
黒マントは、矢継ぎ早に攻撃を放った。ゆーたと、まーこは、何とか、間一髪でかわし続けた。
ゆーこは、今日も、元気全開。ゆーたと、まーこの間を歩きながら、両サイドに向かって、しゃべり倒す。主に話すのはゆーこなのだから、この配置で正解なのだろうが、見方によっては、ゆーこが、他の2人の間に割って入っているように見えなくもない。
そのとき、
「空間転移」
という、大きな声が聞こえたかと思うと、ゆーこの姿がぐにゃりと歪み、悪夢のように掻き消えた。
「ゆーこ!」
ゆーたと、まーこが同時に叫んだ。
その次の瞬間、また、
「空間転移」
という、大きな声が聞こえたかと思うと、ゆーたと、まーこの視界はぐにゃりと歪み、軽いめまいを覚えた。
ゆーたと、まーこは、気が付くと、さっきまで3人で歩いていた街中とは、まったく違う場所にいた。
そこは、デパートのおもちゃ売り場のようであった。
2人が、やっと、そこまで理解した瞬間、例の大きな声で、
「裂天掌(れってんしょう)」
と聞こえた。何かを感じ取ったゆーたが、まーこの腕をつかんで、横っ飛びすると、さっきまで2人がいた空間の後ろの商品陳列棚が吹っ飛んだ。
「ちっ、外したか。勘のいい奴だ」
忌々しげな声が聞こえた。
「さっきから、何者だ? お前? 卑怯だぞ。姿を現せ」
ゆーたが、裂天掌とやら言う技が飛んできたと思われる方向に向かって叫んだ。
すると、
「空間転移」
という声とともに、ゆーたと、まーこの前方の空間がぐにゃりと歪み、それが直ると、1人の黒マントを羽織った男が立っていた。
「相手に姿を見せずに戦えるのは、資質の一つなのだが、『卑怯』とはな。いいだろう。姿を見せたところで、私の勝利は揺るがない」
黒マントは右脚を大きく後ろに引き絞ると、
「滅地脚(めっちきゃく)」
と叫んで、一気に解き放った。その蹴りは、デパートの床のコンクリートをビキビキと割りながら、ゆーたと、まーこに迫った。
今度は、まーこが、ゆーたを間一髪で物陰に引き込んだ。
「くそっ、何とかして反撃しないと」
ゆーたは、唇を噛んだ。
「そうね。反撃しましょう」
まーこは、そう言うと、ゆーたの左腕に、勝手に持ってきた売り物のデュエル・ディスケットを装着し、
「はい、これ」
と、1枚の蛮我王カードを手渡した。
すると、ゆーたは、すっくと立ち上がり、カードをデュエル・ディスケットに装填して、
「俺のターン。ヴィントホーゼ(竜巻)・リントヴルム(飛龍)を攻撃表示で特殊召喚。黒マントにダイレクト・アタック」
と、ビシッと決めポーズをとったが、
「って、出るわけないだろ! そんな物!」
と言った。
「ありがとう。こんな時でも、ノリツッコみを忘れないあなたが好きよ。これで、戦える」
まーこが言った瞬間、2人の間を一陣の風が吹き抜けた。ゆーたと、まーこの前に小さなつむじ風が起きたかと思うと、それは見る間に大きくなっていった。かくして、ヴィントホーゼ・リントヴルムは2人を背にして、雄々しく立ちはだかったのだった。
「でも、どうやって、操るの?」
尋ねるゆーたに、まーこは、
「私が操るわ。この操者の笛で」
と言って、何やら取り出した。
「って、それ、ただの防災用の呼子笛じゃんか」
ゆーたが、ツッコむと、
「ありがとう。これで、この笛も、ただの笛ではなくなった」
まーこは、笛を吹き、
「アーテム(息)」
と言った。
すると、ヴィントホーゼ・リントヴルムの口から竜巻が吐き出され。それは、見る見るうちに大きくなって、黒マントに迫った。
「空間転移」
すると、黒マントは、空間転移して、逃げてしまった。
「くそっ」
ゆーたは、悔しそうだったが、まーこは、落ち着いて、
「大丈夫、近くにいるはずよ」
というと、笛を吹いて、
「アルム(腕)」
と言った。
すると、ヴィントホーゼ・リントヴルムの口から、細く長い竜巻が生えた。ヴィントホーゼ・リントヴルムは、それを鞭のようにしならせて、辺り一面を手当たり次第に破壊し始めた。
「月光拳(げっこうけん)」
何かが、飛んでくる。とっさに、アルムでガードすると、相殺、攻撃も消えたが、アルムも消し飛んだ。
「あいつの攻撃を、なんとかできないかしら」
「まーこの言霊は例によって、力不足なのか?」
「『黒マントは攻撃できない』は無理でしょうね」
「うーん。……あ、そうだ。『黒マントは、小さい”つ”が言えない』ってどうだ?」
「え?」
「ほら、あいつの技、『裂天掌』、『滅地脚』、『月光拳』の3つとも小さい”つ”が入っていないかい?」
「あっ、そういえば」
「だから、小さい”つ”を封じるんだ。話し言葉は、ローマ字入力じゃなくて、かな入力だからね」
「あっ、バカ」
「えっ? あ!」
そう、この瞬間から、ゆーたの言ったことと反対のことが現実となる能力によって、話し言葉はローマ字入力になってしまった。
「仕方ないわ。ローマ字入力で、小さい”つ”を封じましょう」
まーこは、笛を吹いて、ヴィントホーゼ・リントヴルムを少し脇によけると、高らかに宣言した。
「黒マントは、同じアルファベットが2文字以上続く発言ができない」
「なんだそりゃ? アホが。行くぜ。れ……あれ? 言えない」
黒マントは、口や喉をさすっている。
「そうか。同じ文字が続けられないから、r・e・t・t・e・n・s・h・o・uと言えないのか、こりゃあ、大ピンチだ」
しかし、黒マントは、ニタニタ笑っている。
「裂天掌」
技の衝撃が、ゆーたと、まーこを襲う。ヴィントホーゼ・リントヴルムが護ってくれなければ危なかった。
「驚いたか、ガキども。チッコイ”つ”なんざ、単独で入れられるんだよ。ltuもしくはxtuでな。俺は、今、reltutenshouと言ったのさ」
黒マントは勝ち誇った。
「滅地脚……月光拳……裂天掌……滅地脚」
黒マントは、矢継ぎ早に攻撃を放った。ゆーたと、まーこは、何とか、間一髪でかわし続けた。
作品名:口は幸いのもと〈第5話 異能の敵〉 作家名:でんでろ3