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ダメイジェン
ダメイジェン
novelistID. 26352
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トウキョウモノフォビア

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 違和感の、正体。虚勢で見えなかっただけで、しっかりと私の中には根づいていた。
「何が《嫌》なのか……見つけた、ようだね」
 待ってましたとばかりに、口角をゆっくりとあげる彼。とても、恨めしい。
 そんな私の怨嗟にも気付かずに、彼は続けた。
「いや、《僕》も予想してなかったわけじゃないよ? 実を言うと、ほとんど分かってたと言ってもいい」
 それは私も同じだ。『私』が自分のことを他人よりも知っていないというのなら、お前が全知全能の神であるというなら。
 私は――。
「さあ、……そろそろ向き合う時間だよ」
 息を深く吸って、今の自分に説教しよう。
 そうだ。

 私は――フラれたのだ。

 《憧れ》という曖昧で陳腐な事象だけで、気がつけば私は、恋に落ちていた。
 バスケットの先輩だ。よくある話でしかない。
 真っ当に恋をして、真っ当に告白して、真っ当に玉砕した。
 客観視すればいわゆる《よくあるパターン》なのだけれど、初めて告白なんてモノが、持てる勇気を振り絞ってチャレンジした行為が、こうも簡単に失敗するのかと思った時の絶望は計り知れない。
 不登校になりかけた、期末テストはぼろぼろだった。
 けれど、どういうわけか心はからっと晴れていた。それはもちろん、死んでしまおうかというほどの陰鬱の反動でもあるのだけど、とりあえず割り切って気持ちを切り替えようと思えた。
それなのに。
 すべての原因、このセカイをつくってしまったのは、このことだったのだ。
 どしゃぶりの雨が、私の代わりに泣いてくれていた。仮面で固められた、笑うことしかできない私の代わりに。
 いつまで、私につきまとうつもりだ。
 私はもう、いちいち傷つかない。
「納得、できたかい」
 心配そうに、覗きこんでくる。つぶらな瞳には、うっすらと涙すらうかんでいた。
「うん、もう大丈夫」
 どうして貴方が泣くの、なんて……気恥ずかしくて、言えない。
「……そう、かい」
 それだけ言うと、彼はとてとてと走って、寂しい廊下を端まで渡っていった。
 そして、くるりと振り返る。
「また来たくなったら、いつでもおいで。茶菓くらいは、用意しておくとしよう」
「あはは、ありがと。でも――」
 もう、二度と来ないようにするね。
 その言葉を、私は静かに飲み込んだ。
「それじゃ、さよなら」
 ふるふると手を振る彼は、とてもとても――脆かった。
 儚かった、助けたかった。
 けれど彼は神様だ、私の助けなんて――必要ない。
 そう、自分に言い聞かせて。
「……さようなら。キミが順応力のある子で助かったよ。暴れる女の子を無理矢理縛りつける趣味は、残念ながらないからね」
 ありがとう、私だけの神様。
 二人の声は、いつまでも。誰もいない廊下に、響き続ける。