雨の中に甘い飴
青年は辺りを見渡し、すっかり暗くなっていることに気づき、裾を上げ、腕時計を見る。
時間はもう7時前だった。
「さて、俺はもう行かなきゃならねぇ。じゃあ、元気でな。」
青年は立ち上がり、その場を去ろうとするとパンを食べて元気になったのかその猫が段ボールの中から飛び出し、青年の足元に近寄る。
その青年はしゃがみこみ話しかける。
「お前も来るか?」
「にゃー」
猫は短く鳴いたあと、青年は手を差し伸べる。
猫は一回甘噛すると、手に「ぴょん」と乗る。青年は猫を自分の学ランのポケットの中に入れると、ちょうど猫の頭が出るサイズで、猫はそこから頭だけ出し、青年が歩く度に揺れるのを楽しむように鳴く。