君が言う。
第一章・紅の里のカンナ
ここは紅の里。秋に限らずずっと紅葉で紅く染まる里。
村外れの小さな館、そこに僕は住んでいる。
「カンナー、夕飯に使う山菜採ってきてくれないかね?」
僕の名前を呼ぶのはこの館の亭主‘ハル’。かなり歳の逝った老婆だが、身寄りのない僕に良くしてくれる。ありがたいことだ。
「あ、うん。わかった。」
僕は答える。いつものように。
山菜を採りに行くのは、館のすぐ裏の裏山。
自慢でもないが、いつものように行くこの山は、自分の家のように全てをわかっている。山の性質、道、茸が生える場所、山菜が取れる場所、なんでもわかった。
淡々と足を進め、入り組んだ道無き道を進み、山菜のある場所にたどり着く。
「あ。」
ふと気付くと、そこには松茸があった。
この山は松茸がよく育つ。村の皆は知らないが、幼い頃から山に遊びに行っていたから、ここには山菜がとても元気に育つことがわかっていた。
でも、松茸が採れることはそんなにないから、少し嬉しさがあった。
山菜を籠に入れ、一段落ついたとき、背後の林から音がした。
「……え?」
もしかして…猪!?
小さな動物が動く音ではなかった。
だけど、ガサガサ言うだけで、こちらに姿を見せる気配がしない。不思議に思い、警戒しながらも、動く手を押さえ切れなかった。
林をかぎ分け、いるであろう生物を見ようと試みた。
「……!」
そこに居たのは…