関西夫夫 フォアグラ
「ここらのザリガニはあかんのちゃうか? いや、おまえはいけるかもしれへんな。」
「油で消毒したらええねん。・・・おいしいわ、水都。ええなあーやっぱ嫁はんのごはんは美味い。」
「もっと、優雅にお出迎えしたるつもりやってんけど。」
「それやったら、出し巻き卵とジャコオロシでええで? それやったら、時間かからへんやろ? おまえ、デパ地下に遠征して優雅には、俺でも無理や。」
「いや、たまには変わったモン食わせたろーと思てな。」
「うん、これはこれで嬉しい。ええな? おかえりでごはんって。」
「俺は、毎日やってもろてるけどな。」
「俺のは趣味やから。たまに、おかえりしともらうんはええわ。キュンってなる。」
「・・・・・あほがおる、あほが。おっさんのくせに、キュンって。」
「そのあほのおっさんの嫁やってるヤツも、あほじゃっっ。」
「あははは・・・せやろなあ。」
平日に、ふたりして食卓を囲むのは、ことのほか、俺には嬉しい。それも、俺の嫁が、料理をして出迎えてくれるなんて、ほんま幸せもんや。
このお礼は、今晩じっくりと返そうと思う。なんせ、嫁が早く帰って来たんやから、時間が二時間くらい浮いている。たまには、風呂もええなあ。洗うとこから、じっくりやったら楽しそうや。
「花月。」
「ん? 」
「そのエロ顔は、きしょいから、メシ食う時はやめ。」
「あ、ごめんごめん。妄想だだ漏れしてた? 」
「しすぎじゃっっ。付き合うけど、明日も仕事やから加減してや? 」
「わかっとるよ。俺かて仕事やん。・・・まあ、じっくりと。」
「もうええ。食うほうに集中せぇ、このどあほ。」
ニヤニヤと俺の亭主は笑って、フォアグラをばっくりと口に投げ入れている。まあ、俺も、それは期待しとったから、ええねんけどな。
作品名:関西夫夫 フォアグラ 作家名:篠義