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食べ物による小話 #04「シーザーサラダ」

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「そう。そもそもシーザーは英語読み。彼が生前にサラダを楽しんでいたら、カエサルサラダになるでしょ」
「そこはほらアメリカさんだし」
「そうなんだよ。そもそもシーザーサラダはアメリカ産なんだよ」
「サン?」
「カエサルは関係なく、メキシコにあったシーザースパレスってレストランで発明されたのが発祥。当時アメリカは禁酒法が施工されていたため、国を越えて食事を楽しむ人が多かったわけだ。レストランはアメリカとの国境近くにあったから、うってつけだったんだね」
「はいな」
「アメリカに近いメキシコに店を構えていたイタリア人のシーザー・カルディーニ氏。彼は七月四日のアメリカ独立記念日に、有り合わせの材料でサラダを調理した。それがシーザーサラダなんだよ」
「へぇ……。じゃ、メキシコ料理になるんだ」
「厳密にはね。ただ、シーザー氏はその後渡米しているので、アメリカ料理となっても問題はないはず」
「なるほどねぇ……」
 なにやら神妙に頷く彼女。
「美味しいサラダを作ってくれたその人に感謝ね」
「そうだね。日本には五十九年に伝来してるから、その人にもだね」
「じゃあ終戦後なんだ」
「そうそう。日本には終戦後のGHQのパーティーで初披露されたんだよ」
「日本は戦争を乗り越え、サラダを手にした訳ね」
「……色々と間違ってる気がするが、合ってる気もする」
「あなたが私の言葉を注意しようだなんて、一万年と」
「それはさすがにもう古い」
 愛してはいるけれど。
「パチンコになってからすごいわよね……。ってか、なんでもパチンコになるんだものね……」
「彼氏がパイロットのアイドルとか、『嘘だっ』て叫ぶやつとか、倒れながら銃弾を避ける映画もパチンコになるからねぇ……」
「次はきっと、伝説の木の下で告白するやつよ」
「……それ、もうなるらしいよ」
「嘘だっ!」
「それどころか、餃子を一日百万個作るお店もらしいよ」
「どんな風になるのかしら……」
 ちょっとやってみたいかも。

   ――――――――――◇――――――――――

「でもなんでシーザーサラダなの?」
 たまには僕からも疑問を出してみよう。
「ん? いやぁ……」
 そこで彼女はすっと一つ、お店を指さした。
「あそこに英語でオリジナルシーザードレッシングってあったからさ」
「マジで?」
「なんでそんなに飛びつくのよ」
「えっと……、シーザーサラダを作ったカルディーニ氏は、その後経営してたホテルを売却してドレッシングの会社を設立したんだよ」
「……じゃ、あれがそうなの?」
「多分ね」
 同じ様な名前はいくつかあるので、一概にそうだとは言えないが、もしそうだとすればこれは嬉しい。
「レアなの?」
「いんや。アメリカのスーパーなら今でも売ってる。日本ではあんまり見かけたことないからさ」
「じゃ、あれと材料買って帰りましょ。ウチでサラダを作ってあげるわ」
「え? いいの?」
 てっきりサラダの美味しい店に行くのかと……。
「どっかのメカニックじゃあるまいし」
「あれは逆でしょ。男が作ってくれるのよ」
「……手伝うよ」
「素直でよろしい」
 くす、と彼女が笑った。
 少し嬉しかった。
「きっとあなたの所にも来るわよ」
「サンタが?」
「そう。良い子にしていたでしょう?」
「そうかな」
 結構親不孝だったと思うが。
「そうよ」
 耳元に熱い息。
「少なくとも、私には」