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本当にあったゾッとする話8 -もう一人の自分-

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東京に戻り、またしばらく経った頃のことだ。
私は大学の授業が終わって、誰かと飲みにでも行こうと思った。所属しているサークルの部室に行けば、大抵ヒマな奴がいて、酒を飲みにいく相手を見つけるのは苦労しなかった。
そこで私は部室に顔を出すことにした。
部室には、いつものようにヒマそうな連中がごろごろしていた。その中の私と同学年の男が私の顔を見て、声を掛けてきた。
「おう、××。昨日はあんな所で一人で何をしていたんだ。」
「えっ、あんな所って?」
私は面食らって聞き返した。
「昨日の夕方、サンシャイン通りを一人で歩いていただろう。俺が声を掛けたのにシカトしてそのまま行っちゃったじゃないか。」
「俺、知らないよ。第一、昨日は5限が終わってからバイトに行ったから、夕方にサンシャイン通りなんか、行けるわけないじゃん。」
俺は九段下にある大きなホテルの宴会場で、ボーイのアルバイトをしていたのだ。
「えっ、うそだろ。だって、あれ、おまえだったぜ。」
私は愕然とした。
これで3回目だった。
過去2回のときの、声を掛けてきた相手の最初の言葉を思い出した。
普通、知り合いに似た人を見かけて話しかけるときは、「□□さんですか?」とか「△△さんじゃないですか?」とか、確認の声を掛ける。しかし私の場合、2回ともいきなり「○○さん」と呼びかけられたのだ。つまり、2回とも相手は私のことを○○さんだと確信したうえで、声を掛けてきていたのだ。
自分そっくりの人間が、自分の生活圏に近い所で生活している。
この事実に気が付いたとき、なぜかわからないが、背筋に冷たいものが這い上がって来たのを覚えている。

その後、二度と同じようなことは起こらなかった。
私と瓜二つの○○さんとは何者だったのだろう。
○○さんも私と同様、私と間違われて私と同じような思いをしていたのだろうか。
○○さんは私の存在を知っていたのだろうか。
もし、私自身が○○さんとどこかで出会っていたら、どうなったのだろうか。
現代のIT技術を利用すれば、その進んだ顔認証技術によって群衆の中から特定の人を顔だけで見つけることもできるようになっているが、この現代のIT技術をもってすれば、○○さんと私は見分けられるのだろうか。
今でも私の興味はつきない。