木の上のお客さん
「はい。来てますよ。かわいいお客さん」
「申し訳ありません。わたしには、あまり慣れていなくて……」
ことばがとぎれました。女の人は口ごもってから、小さく深呼吸していいました。
「このサルは、なくなった主人がかわいがっていたんです。主人の葬儀の日にいなくなって……」
女の人の目に涙が光ります。
「そうでしたか。不思議なご縁ですね。このおさるさんは、妻を亡くしてから、やる気をなくしていたわたしを、立ち直らせてくれたんですよ」
その後、もんちゃんは、たびたび坂井さんの家に遊びにやってくるようになりました。
もちろん、飼い主さんもいっしょです。
こうして坂井さんの家は、ふたたび笑い声につつまれるようになりました。