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でんでろ3
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ピンポン球の密室(直美シリーズ2)

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「……バカは、おじさまよ」
「へっ?」
「1番見せつけたかったのは、あくまで技術力よ。謎解きが途中だったわね。おじさま、津鞠洋司氏の印象を、もう一度言ってくれる?」
「きさくな、叩き上げの職人」
「津鞠氏は用心深くて、あまり表には出てこないんだけど、会った人は、皆、口をそろえてこう言うわ。『さすが洗練されている。デザイナー畑からの人は違う』」
「えっ!」
「おじさま、小さくしか写ってないんだけど、この写真を見て」
直美のタブレットに映し出された写真に目を凝らす。それは、彼の津鞠洋司氏に似ているようであった。
「彼の名は、飛龍卓。日本(ひのもと)飛龍品質工業、通商、ひひひ工業の社長。ひひひ工業は町工場でありながら、他の追随を許さないダントツの技術力を誇り、ここが止まれば世界が止まる、といわれるほどよ。カヴァリの心臓部でもあるわ」
「どうして、カヴァリの中に入らないんだ? 重役にだってなれるだろうに?」
「あら? おじさまだって、刑事で終わるべきではなかったって、神田警視がいつも……」
「まったく、下らんことを言う男だ。真に受けるんじゃありませんよ」
「で、まぁ、謎解きの続きね。この地球外生命体のエサは炭素。もともと宇宙空間で生きていたから、真空中でも生きられる。真空水晶球の内側に怪盗ミルフィ~ユの偽のサイン形の溝を作っておき、加工したダイヤモンドで埋める」
「おぃ、軽く言うけど」
「軽く言ってるつもりはないわ。神をも超えた技であることは確かね。ねぇ、真空水晶球の警備のその日の最後に、台座か何かに真空水晶球を戻すとき、津鞠氏、つまり、飛龍氏は、真空水晶球の向きを気にしていなかった?」
「そういえば、確かに、今にして思えば、真空水晶球は、ほぼ真球なんだから、向きも何もないよな」
「おそらく、サインのある方を下にしていたのね」
「おいおい、ぱっと見てサインのある場所が分かるくらいなら、私だって気づいたはずだぞ」
「見たんじゃないわ、触ったのよ」
「ん?」
「触って、わずかな歪みを感じて、目印にしていたのよ」
「わずかな歪みって、1マイクロメートル以下だぞ」
「そのくらい、朝飯前だったと思うわ」
「しかし、何で、こんなことをしてしまったんだろう?」
「カヴァリの重役たちにさせられたんでしょうね。彼に、細菌が持ち出せたとは思えないし、おそらく、職人魂に火を点けられてしまったんでしょう。細菌は、水晶球に閉じ込めておけば、絶対安全だとか言われて」
「なるほどね、ま、今回は、子供科学雑誌の記事に助けられたな」
「そうよ、結構役に立つんだから、ほら、『豆知識:最近の研究で、少しずつだが、水晶も腐食させることが分かった』」
直美がタブレットをパタリと取り落とした。
 ダッシュをっ切ったのは、ほぼ互角。玄関で2人、もつれた。
「おじさま、邪魔よ。地球が、地球がー!」
「直美ーっ! 私が、先に行かなきゃ車が出せんだろうがー!」
そのとき、直美の母の美代の声が聞こえてきた。
「あんたたち、どこ行くのか知らないけど、電話持って行きなさーいっ」