勇者の憂鬱 勇者の裁判
「えー、これより勇者」ゴホンと咳を1つ。「もとい元勇者の裁判を行う」
途端に周りに座ってた元勇者の仲間が「死刑だ!」と連呼し始めた。それにつられ、周りの人も「死刑」とあとを続けた。ただ、弁護人の大魔王を除いて。
裁判長が「静粛に」と叫ぶ。そしたら徐々に声が小さくなっていき、幼い子供が最後まで「死刑」と言っていた。それは勇者、もとい元勇者のもと妻の間にできた現勇者。つまり元勇者の1人息子である。それを聞いて元勇者は何かに耐えるように歯を食いしばる。
「えーでは起訴状を読み上げてください」と裁判長が言うと、「はい」と裁判員の1人が席から立ち、紙を持って読み始める。
「えー、元勇者は普通勇者が倒すはずの世界を脅かす大魔王と親密な関係を取っていたことにより、元勇者には裏切りの罪により―――」
「異議あり!!」と元勇者が手を挙げる。
「その裏切り発言を却下するようお願いします!」
すると男剣士が立ち上がり「ふざけんな!」と怒鳴りつけた。
「てめぇが大魔王を倒すために仲間になってほしいと言われたから仲間になったんだ!なのにその誘っといた勇者が。いや、元勇者が大魔王とグルなんて裏切られた以外なんかあんか!?あぁ!?」
元勇者はそれを聞いてしばらく黙りこんだ。大魔王はそこで立ち上がり、「異議あり!」と言った。
「今の男剣士の言葉は正しいとはいえない。なぜなら男剣士は人として生まれてきて、吾輩は大魔王として生まれてきただけであって、それは差別だと思います!それに気付いた勇者は吾輩を大魔王としてではなく、同じ生命を生まれもってきたものとして見ただけです!よって勇者の無罪を主張します!」
「異議あり!」と女僧侶。
「男剣士が言いたいのはそれではありません!男剣士が言いたいのは「大魔王と仲がいいならなぜ自分らを誘ったか」と言いたいのです」
そこで裁判長が相槌をうつ。
「もうすぐ2時間経ちます」
そこに男剣士が何か察したらしく、舌打ちをすると勝手に裁判所から出て言った。
「今はしばし休館にし、また後ほど。では」
と、裁判長が立ち上がり、数名後ろに引きつけて法廷から出て行った。
元勇者はそのまま立ち崩れ、無気力化してった。大魔王が近づき元勇者の肩をぽんっと叩く。
「元気出せ。このままじゃきっと死刑だぞ」
「いいよ、俺裏切りモンだし。あいつらはもう俺の言うことなんか聞きやしないさ。もし俺が無罪になってもな」
元勇者はそのままため息をひとつこぼしたと思うと、立ち上がり、法廷を出てった。
「お、おい!どこ行くんだよ!?」
と大魔王が元勇者についてったら、元勇者は外に置いてあった自分の刀を喉に突き刺していた。
元勇者からの喉から血が流れ、胸をつたり、床に流れ、元勇者が倒れこむと血が床一面真っ赤に染まった。
「お、お前・・・勇者。お前・・・」
大魔王は何か言いたげだったが、口を閉じ、瞬間移動呪文でどこかにとんだ。
その行き先は誰も知らない。
作品名:勇者の憂鬱 勇者の裁判 作家名:DG4