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こどものことばあそび

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ある学校の あるクラスの ある日のこと。
ホームルームの時間に先生がおっしゃった。
「きょうは にじのおはなしをしましょう」
子どもたちは、先生が何を始めるのかと注目していた。
でも先生は、こう言った。
「きょうは、みんなが にじについて思うことを話してください」
みんなは、ざわざわとしたけれど、先生やみんなに聞いてもらおうと考え始めた。
「さて、だれから話をしてくれるのかな」
真っ先に、右手を耳に触れるほど真っ直ぐに上げたのは、クラスの委員の理科の好きな男の子だった。
「雨上がりの空とか 空気中にたくさんの細かい水滴がプリズムの役割をして 太陽の光が反射や屈折をすることで 光が分散して赤から紫までの光のスペクトルが並んだ、円弧状の光である。これが虹です」
ほかの子どもたちは 「プリズムってなんだよ」「スペクトルってウルトラマンの光線か?」などと口々に騒いだ。
男の子は、好きな話ができた嬉しさに満面の笑みで席に着いた。
先生が、騒いでいる子どもたちを静めて「はい、次は?」と尋ねた。
クラスでも、おっとりと少々大人っぽい女の子が手を上げた。
「わたしは、妹で 上にお姉さんがいます。 わたしの母は 二児の母です。おしまい」
仲の良いお友だちが拍手をすると、皆つられるように拍手をした。
女の子は、少し照れながら席に着いた。
次に手を上げ、立ち上がると話始めたのは、クラスで元気な人気者の男の子です。
「給食が終わって、ああ、きょうのおやつは何かなぁってよだれ垂れて眠くなるのが二時です」
クラスのみんなが どっと笑った。先生も「いねむりは困ったわね」と笑った。
はいはぁーいと 大きく手を上げた男の子が先生にあてられた。
「ぼくも 二時なんです。えっとぉ 昔の言い方で丑の正刻、あ、正刻っていうのは、きっかり、ちょうどって意味で その時刻のことが 二時です」
「わっ!それって『草木もねむる うしみつどき』ってお化けや幽霊の出る時間だぁ」
妖怪、オカルトの本ばかり読んでいる男の子が声を上げた。
「女子は何かありませんか」
先生は、一番前の席の 恥ずかしがり屋の女の子を促した。
その女の子は、俯き加減で 小さな声で答えた。
「わたしは、チカで 妹は、マユです。お母さんは、アキで おばあちゃんは、ユリです。
生まれた弟は、マオです。みんな 二字です。」
言い終わると、真っ赤になって静かに座った。
「おれは、一日にぜったい一回は、漫画を見ます。かっこいいなぁって思います。おれも大人になったら 二次元の世界で有名になりたいと思います。」
「元(げん)が 余分じゃん」
茶化されると「おまけおまけ」と、けたけたと笑って席に着いた。
先生は、みんなの自由な発想に感心しながら、ホームルームを終えようとしていた。
「先生」
「はい、まだある?」
「うちの一番上のお兄ちゃんがね。『また駄目だったぁー。二次募集さがすぞ』って、落ち込んでるの。にじって寂しいの? つらいの?」
その女の子は、兄弟がたくさんいる家庭の末っ子。先生は、少し困ってしまった。
「先生が あとからお話してあげます。でもね、いけないことじゃないのよ。お兄さん応援してあげなくちゃね」
女の子は、ほっと笑みをこぼした。
「はぁい、みなさん。先生は、驚きました。みなさんが、『にじ』という言葉をいろいろと考えてくれたこと。先生が勉強になりました。きょうはこれでおしまいにします」
「また、やりたい」「今度は、ぼくも発表するぞ」「先生、またやってね」
クラスの声に先生は、「はい、わかりました」と黒板 に字 を書きました。


     ― おしまい ―

作品名:こどものことばあそび 作家名:甜茶