小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
なつきすい
なつきすい
novelistID. 23066
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

この声が届くまで 続この心が声になるなら

INDEX|9ページ/9ページ|

前のページ
 

 どれぐらいそうしていたか。ふと、肩が濡れたのに気がついて、夏芽さんの顔をそっと離そうとしたけれど、思いのほか腕の力が強くて、やめた。
「ありがとう」
 その、たった一言。
 たぶんいろんな言葉が浮かんで、消えて、迷って、最後の最後に残った言葉が、それだったんだろう。どれが適切かを、何度も何度も、考えたんだろう。そんなことしないで、もっと全部、ぶつけてほしいのに。
 だけど、たぶん、俺の伝えようとしたものは、きっと伝わったんだろう。「ありがとう」という声と、肩で涙が冷えていく感覚で、そう思う。
「ね、夏芽さん。俺ずっとずーっと、夏芽さんのそばにいますからね。毎年、お祝いさせてください。毎年ちゃんと、夏芽さんが生まれてきてくれてよかったって、言わせてくださいね」
 時間はかかるかもしれない。それを伝えるには、信じてもらえるには、俺も伝えなけらばならない。
 俺はいつまでも待てるから、あなたも、ちゃんと待っていて。あんまり言葉の上手くない俺が、あなたに届く言葉に気持ちを乗せられるようになるまで。
 俺たちのこのこころが、ちゃんと声になるそのときまで。