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覇王伝__蒼剣の舞い1

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 蝋燭の炎が揺らめく側で、彼は鏡を見つめていた。
 金縁の見事な装飾の古い鏡だ。
 その中で、赤く強弱を繰り返しながら何かが光っている。
 「___日影、守備はうまくいっているようだね」
 「はい」
 「で、アレは何か云ったか?」
 「いえ、知らぬと」
 「だが、あの父上が何もしなかった事は考えられない。義兄上も“ドラゴンの遺産”に気付きだした。知られると厄介だ」
 「黒抄の動きならばお任せを。御命令通り、今頃はご自分の領内を駆けずり回っておられましょう。“遺産”を前覇王陛下が北領内に隠したと噂を流しましたので」
 「暫くは、他には目がいかない、か?___ふふ、さすがだ。単純な義兄で本当に助かるよ」
 白王・聖連は偽情報に踊らされている黒王を想像して、クククと嗤った。
 鏡の中の赤い光が、一段とその色を濃くしていく。
 「覇王に誰が相応しいか、今に理解る。今に、な」
 細められる金色の眸が、鏡の中の光に反射して赤くなる。
 この時、彼の野望が着々と且つ静かに進んでいたのを聖連と日影以外未だ知る由もなかった。

 『____お前の悪い所は、直ぐ諦める事だ』
 何度も何度も剣を弾き飛ばされ、しまいにはやはり叶わないと思う彼に、その男はそう云った。未だ一度も剣を交えた事はなかったが、彼にはその時の自分が見えていたのだろう。
 何のために剣を持つのか?
 最初、そう聞かれた。
 四国最強の剣士・四獣聖になりたい、そう答えたのだ。
 『___それで?』
 予想していなかった次の問に、少年は言葉に詰まった。
 それで?
 いまでも、はっきりと覚えている。その時の彼の冷ややかな視線を。
 その答えが、何となく理解った気がする。
 ___僕は、この四国を邪なる者から護りたい。この手で。
 『だったら、諦めるな。負けると思ったら、死ぬぞ。戦場じゃ、誰も手加減してくれねぇ。みんな本気なんだよ。生きるか死ぬか。諦めるのは簡単だ。だが、それじゃお前は死ぬ』
 死んでは、護りたくても護れない。後悔してももう遅い。
 恒に先陣に立つ四獣聖、その華やかな裏には生と死が表裏一体でつきまとう。
 戦場では、敵を前にしたら諦めと逃げは許されない。それが四獣聖なのだと、拓海はこの一月で学んだ。一人の男の背を通して。
 だから、もう諦めない。
 「だいぶ強くなったじゃねぇか?拓海」