覇王伝__蒼剣の舞い1
___あの人…。
白い衣を纏い、王城の裏へ向かう影はやがて二人の人影と合流する。
___白碧の…!
どうして、彼らがここにいるのか。いや、知らせなければ彼に。
____清雅さま!!
早く。早く…。
遠退く意識の中、拓海は空を染める色が血の色に見えた。彼の想いは哀しく、戦いは彼を引きずり込んでいくのである。
白碧の不穏な動きは、他の四獣聖に伝えられた。
「狙いはやはり蒼剣と___」
「俺の首だろうな」
「黒抄と組んでいるという噂もありますが」
「どちらにしろ、白い影となると厄介だぜ。奴らは並の相手じゃねぇ」
「剣じゃ、この衣は斬れないならね」
「問題は、王都に潜伏している事です。それこそ、民を巻き込みます。彼らは我々の剣を封じるつもりです」
「フン、黒狼同様聖蓮も腹黒だな」
白い影___その衣は鋼のように剣を通さない。
四獣聖の剣、『龍王剣』、『虎牙星』、『亀甲文殊』、『鳳凰剣』の真の力を発動させれば別だが。
しかし、王都で発動させればその力に家が壊れる。
そこに更に蒼剣が加わると、王都は一瞬のうちに消える。
彼らにとって最強の剣は、ある意味弱点になる。
「でも、変ですね。そろそろ何かあってもいいかと思うのですが」
「ねぇ、本当に来たわけ?」
焔が、近くにいた瑠邑を振り返る。
「確かです」
「もうっ、やりにくいなぁ」
クシャクシャと髪を掻き上げ、焔は苛立った。
____何を企んでる?聖連。
清雅は、暮れゆく空を睨みながら嫌な予感に唇を噛むのであった。
作品名:覇王伝__蒼剣の舞い1 作家名:斑鳩青藍