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覇王伝__蒼剣の舞い1

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 この時、同じように蒼国を目指すもう一組がいた。
 共に蒼国を目指す二人だがその思いは違っていた。
 憧れの“四獣聖”を目指す少年と、元四獣聖・玄武である父親。蒼国を目指すと云う事が今まで以上に危険だと理解しているのは、父親の方だろう。
 「ここを抜ければ、蒼国領内なんですか?父上」
 「人目につかぬようにするにはな」
 「東海道を行くのが早道では?」
 東海道というのは、蒼国にのびる四国に走る四つの街道の内の一つである。
 「その東海道に、我々を待ち伏せしている者がたくさんいてもか?拓海(たくみ)」
 「…会いたくないですね…」
 「ここを無事に通れると云う保証もないが」
 「ちょ…、父上…」
 すうっと血の気が引く気がして、拓海は後悔した。
 玄武の狼靖___、嘗ての四国統一の英雄も命を狙われていた。
 七年前、蒼剣を蒼王に渡した、黒抄の言い分はそれだ。
 その息子の拓海は、父のような剣の使い手になりたい___しかも、伝説の覇王親衛隊“四獣聖”になりたいと思っている。
 その父が、七年絶って蒼国に行くと云う。
 前覇王死去から七年、四獣聖は四散したと云うがその一人であった父が動くと云う事は新たな覇王の誕生を意味している事に他ならない。
 何よりも、彼を動かしせしめた最大の要因は蒼国国主・蒼王が元玄武・狼靖とは叔父と甥と関係にあり、その蒼王の命が狙われていると聞いたからだ。
 「お前も四獣聖になる気があるのなら、覚悟して来るんだな」
 月明かりがあるものの、どちらかと云うと見通しのいい東海道より森の中の方が危険極まりないのだが、身を隠すと云う点ではいいだろう。
 しかし、同じ事を敵も考えていた事に狼靖は顔を硬くした。
 「___こんな所で、貴方に会うとは思いませんでしたよ。玄武さま」
 「吾もだよ、闇己。随分出世したようだが?」
 「黒王陛下のお陰ですよ。玄武さま、黒王陛下は貴方の命を御所望です。理由はご存じでしょう」
 「吾が蒼王さまの叔父だからか?」
 「それもあるでしょうが、我が王が許せないのは貴方が蒼王さまに蒼剣をお渡しになった事です」
 「剣の意思だ。蒼剣がどういうものか知っていよう?」
 「だが、蒼王さまは覇王には興味ないようですな。会議はすっぽかす、城は抜け出す、賊相手に自ら剣を振り回す、そのような方が覇王陛下の血筋とは…」