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覇王伝__蒼剣の舞い1

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  牙の村___村と云っても、村人はもう住んでいない。
 東領の小さな村は、すっかり廃墟と化していた。
 地は乾き、砂埃が少しの風でも舞い上がる。
 まるで、戦場の跡のような地。ここに、嘗て緑が茂り、小鳥が囀る村があったなど感じさせないほどに。
 「___義勝さま。本当にこんな所に、蒼王が来るんで?」
 「さぁな。黒王さまの命令だからな」
 馬上にて、男は周囲を見回した。
 何もない村である。今更、何があるのか。
 この時、義勝は五十過ぎ、髪に白いものが交じり始めたが黒抄二武将(こくしょうにぶしょう)と称される腕は今でも衰えてはいない。
 ___しかし、こんな村と蒼王が何の関係があると。
 『__義勝、牙の村に行くのだ?』
 『牙の村、でございますか?黒王陛下』
 『そうだ。蒼王は必ずやってくる。お前が来ると知ればな』
 黒王・黒狼は、そういって自信たっぷりに嗤っていた。
 あの日から、15年___ここはあのまま時間を止めたまま。
 主の為に忠誠の限りを尽くす、黒抄二武将として当然の如く駆け、剣を振るい、道を開く。吾の人生は間違ってはいない。
 だが、嫌でも思い出す。
 彼の脳裏に浮かぶのは、一人の少年だ。
 母親を庇い、共に散った少年。
 『…許さない。お前も、黒狼も』
 そう云って、血塗れの剣を握りしめたあの少年の名前は何だったか。
 ___ふ、吾も老いたか?久しぶりにこの地に来て、感傷に耽るなど。
 「来たか…」
 視線を上げた時、待ち人は彼らの前にいた。