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漢字一文字の旅  第三巻

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十四の五  【滴】



【滴】、花の丸くなった実、それを手でつまみとることが「摘」、さんずいの【滴】は当然丸い水滴。
(しずく、したたる)の意味となる。

だが、滴るのは水だけではない。「富」もだ。
富める者から富んで行けば、富はやがて滴り落ち、貧しい者も豊かになる。
こんな経済学の学説を「トリクルダウン」という。

この「トリクル」が滴(しずく)を意味するが、
えっ、お金が滴り落ちてくるって、――、嘘でしょ!
これが我々庶民の実感だ。

だが庶民はそれが嘘であることを、今まで証明できなかった。
しかし、フランスの経済学者、トマ・ピケティは「21世紀の資本」で、300年間、30カ国の税務データーからトリクルダウン説を完全否定し、富める者はますます富む。
富の格差は拡大し、自然に解消することはない、と理論付けた。
一滴も落ちてきたことがない庶民にとって、まったくその通りだ。

ピケティ理論によると、
今の日本、アベノミクスで異次元の金融緩和政策は富の偏在を加速させるだけとなり、少子化により、その遺産の相続により、より偏っていき、貧富格差はさらに大きくなるだけだ、と。

ならば庶民にも富が滴り落ちてくる方策はあるのか?
答えの1つは累進課税、所得が高ければどんどんと税率を上げる、ってこと。

しかし、この世にはタックスヘイブン、税金の避難所というか天国があるのだ。
カリブ海地域のバミューダ諸島やケイマン諸島、そこへ財産を移せば高額な税金は取られない。

ピケティはタックスヘイブンに流出した純資産に世界的に税を掛けろと提唱する。
だが、事はそう簡単なことではない。
実現しないだろう。
そして残念ながら、他にこれといった富の格差を縮める策が見つからないし、難しい。
これが世界の現実ということなのだ。

というこで、我々庶民は何をしたら良いのだろうか?
そうなのだ、あとはクックックと――歪んだ笑いを滴(したた)り落とすしかないのだ。

こういう男って、つまり鮎風は、水も滴るいい男ではなく、
涙しか滴らない貧乏男――なのかも知れないなあ。 (´;ω;`)

とにかく【滴】、コンチキショー! と叫びたい漢字なのだ。