漢字一文字の旅 第三巻
十一の六 【鮨】
【鮨】、右部の「旨」は「氏」と「日」の組み合わせ。
「氏」は氏族が集まって食事する時の共餐(きょうさん)、この時氏族長が肉を切り分ける時の刀だそうな。
そして、ここでの「日」はその器だとか。
そこから器の中のものを切って食べると味が良い、そこから「旨い」(うまい)となった。
うーん、なるほど、切り分けてもらって食べりゃ、そりゃあ嬉しいっすよね。
そんな「旨」に魚偏がつけば、日本人が一番好む食べ物の【鮨】(すし)となる。
まことに旨い。
そんな【鮨】、元々中国では塩辛のこと。これが日本では「旨い魚」だから【鮨】(すし)になったとか。
一方、同じ(すし)の漢字でも、魚を作ると書く「鮓」。
これは魚介類に飯を加えて発酵させたもの。いわゆる「作る」であり、鮒鮓(ふなずし)、鮎鮓、鯖鮓等の「なれずし」のことだ。
他に(すし)は「寿司」と書く。
今はこれが一般的な字。だが、元々は祝いの目出度い席で出された(すし)、その当て字だったそうな。
そして現代、庶民が一番お世話になってるのが回転寿司だ。
かって大阪に立ち食い寿司店があった。
そこのオヤジ・白石義明さんが、もっと効率的に客に寿司を摘まんでもらいたい。そして、売上を伸ばしたいと常々思っていた。
そんなある日、ハッと思い浮かんだ。ビール工場のベルトコンベアが。
あっ、そうだ、これだ! とサアーと流れるコンベアをヒントに――「コンベヤ旋廻食事台」なるものを考案した。
こうして、1958年東大阪市の布施駅北口にオープンしたのが、回転寿司第1号店の「元禄寿司」だった。
それから12年の歳月は流れ、1970年に大阪で日本万国博覧会が開催された。
もちろん「元禄寿司」は出店された。
苦節ウン十年、これが大好評で、一気に回転寿司が日本中に広まって行ったのだった。
それでは現代、多くの回転寿司店があるが、その勢力具合は?
プチ市民として気になるところだ。
そこで調べてみた。その結果、2014年の全国出店数調査によると、TOP5は以下のようになっている。
1位 スシロー 377店
2位 はま寿司 346
3位 無添くら寿司 342
4位 かっぱ寿司 338
5位 元気寿司 136
元禄寿司の1号店から約半世紀を経て、まさに群雄割拠の下克上だ。
吾輩は函館寿司が好みなのだが、まだまだ広まっていないようだ。
されども……、まさに【鮨】、いろいろな「魚」が「旨さ」を競ってるようだ。
作品名:漢字一文字の旅 第三巻 作家名:鮎風 遊