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漢字一文字の旅  第三巻

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十の一  【山】



【山】、高い山々が連なってる形だとか。
元々中国には火山がない。中央の主峰、その左右に山、このように地殻変動や浸食によってできた山々が連なる。
【山】の漢字は、その美しい姿を表してるそうな。
なるほど、【山】の文字だけで絵になってる、ような気もする。

そんな【山】、日本で一番高い山は富士山。
ならば一番低い山は?

これがなかなか歴史があって、1990年代までは仙台市の標高6mの日和山だった。
ところが1996年に、国土地理院の地形図により、大阪市の天保山、標高4.56mが一番低い山となった。
しかし、2011年の東日本大震災の津波で、日和山が削られて標高3mとなった。これで再び日本で一番低い山に返り咲いたのだ。

ところで、奈良県桜井市に標高467mの三輪山という円錐形の山がある。
この山の歴史は古く、邪馬台国の卑弥呼の墓ではないかとも推測されている。
そして神代の時代のことだ、活玉依姫(いくたまよりびめ)という美しい娘がいた。
この姫の元に夜な夜な立派な男が通ってきた。
やがて姫は身ごもったが、その男が誰なのかわからない。そこで姫は男の着物の裾に麻糸を通した針を突き刺した。
朝となり、男はどこかへと消えたが、姫はその糸を辿って行った。すると、その男は三輪山の大物主神(おおものぬしのかみ)だったのだ。
これで腹の子は大物主神の子供だとわかったとか。

それだけの話しだが、
時は移り、667年、天智天皇は飛鳥から大津へと都を移した。
それに随行した後の妻・額田王(ぬかたのおおきみ)は途中三輪山に差し掛かった時に詠んだ。

 三輪山を しかも隠すか 雲だにも 情(こころ)あらなも 隠さふべしや

慣れた地を離れることであり、きっと後ろ髪を引かれる思いだったのだろう。

ことほど左様に、【山】という漢字、いろいろな物語や伝説を連ならせてくれているのだ。