漢字一文字の旅 第三巻
九の五 【飯】
【飯】、「食」に「反」でなぜ御飯なのか?
「反」は崖に「又」の手の形。崖に手を掛けて登ろうとする形だが、急で身体がひっくり返ることを言うそうな。
ここからいろいろな説があるようだが、穀物のきびと/たかきびを炊き、器の中でひっくり返る「反」の粒を食べるから【飯】、それが主流のようだ。
そして、その炊飯方法は…
始めちょろちょろ中ぱっぱ 赤子泣くとも蓋取るな
これは誰でも知ってる、かまどで上手くご飯を炊く方法だ。
しかし、これだけでは不充分なのだ。
正解は…
始めチョロチョロ中パッパ ジュウジュウ吹いたら火を引いて 赤子泣くとも蓋とるな 最後にワラを一握り パッと燃え立ちゃ出来上がり
これが全手順なのだ。
すなわち炊飯とは
米はβデンプンの固まり、だから固い。これを炊くことにより軟らかくし、αデンプンに変化させること。
そのためには『吸水 → 煮る → 蒸す → 蒸らす』の4プロセスが必要と言われてる。
したがって、始めちょろちょろ中ぱっぱ 赤子泣くとも蓋取るな、これでは蒸す/蒸らすが不充分。
やっぱり――始めチョロチョロ中パッパ ジュウジュウ吹いたら火を引いて 赤子泣くとも蓋とるな 最後にワラを一握り パッと燃え立ちゃ出来上がり――これだけの工程が必要なのだ。
きっと最近の炊飯器はこの全プロセスをカバーしていることだろう。
しかし、ここで一人暮らしの現代人に問題が。
ご飯は1合で充分。今流行りの3合炊き高級炊飯器では、場所も取るし、全プロセスをこなす時間もない。
この難題に最近救世主が現れた。
1合炊きOK、しかもチンだけで。
しかもお値段は消費税込みで108円。百均でプラスチック炊飯容器が発売されたのだ。
当然、筆者も飛びついた。
なぜなら連れ合いは朝が大の苦手。そのためハムレタスマヨ・トーストでずっと一人朝食を続けてきた。
だが、ここで
かした米1合 30分水の中 後は朝ドラ観(み)ながら6分チン 続けて弁当モードで3分間 待てば銀シャリ ほっかほか
てなことで、このように全プロセスが凝縮されたチン飯で、我がブレックファストが和食に変わりましたがな。
いやはや、【飯】だけに、食生活もひっくり返りましたで、美味しい方にね。
作品名:漢字一文字の旅 第三巻 作家名:鮎風 遊