漢字一文字の旅 第三巻
七の六 【橋】
【橋】、右部の「喬」(きょう)は物見櫓である「高」の上に神を招く標木(目印)を立てた形だとか。
そして古代、「はし」の両側にもこの標木を立てたそうな。
こんな謂われより川にかかる「はし」は漢字【橋】となったようだ。
江戸時代、江戸の八百八町に京都の八百八寺。
これに対抗してか、大阪は浪華の八百八橋と言われた。その呼称通り、橋は多くあったとされている。
では、実際のところはどうだったのか。
江戸には約350橋、これに比べ大阪には約200橋ほどしかなかった。
では、なぜ江戸より少ないのに八百八橋?
江戸の橋は約半数が公儀橋、つまり幕府が架けた橋なのだ。
それが大阪では12橋のみ。残りがすべて町人が架けた町橋だった。
幕府の援助なしで、町人が自腹切って架けた。
このプライドと、あまりにもむかつくので、「浪華の八百八橋」とふれ回るしかなかったようだ。
その上に戎橋に淀屋橋、そして心斎橋などなど、呼び方は(はし)はなく全部(ばし)なのだ。
うーん、なんとなく気持ちわかるよな。
さらにだ。
東京にもある日本橋、大阪の日本橋は――ニッポンばし――ですわ。
そして、現代となり……。
サッカーの応援はやっぱり――ニッポン、チャチャチャでしょ。
これ、大阪の「ニッポンばし」の流れだとか、大阪のオバチャンが言うてはりました。
とにかく【橋】、「はし」と美しく言うか、「ばし」と濁って呼ぶかで、えらい違いなのだ。
作品名:漢字一文字の旅 第三巻 作家名:鮎風 遊